富士通研究所、ローカル5Gを活用して工場全体の大量映像を解析するシステムの自動設計技術を開発

製造現場では、データ収集が困難な手作業の組み立て工程などにおいて、カメラとAIを使った映像解析を活用し、作業手順ミスや危険な動作などをリアルタイムに検出し、作業員にすぐに知らせることで作業品質や効率を向上させ、カイゼン活動を加速させる取り組みが進んでいる。さらに、高速大容量な無線技術であるローカル5Gの活用によって、工場全体の映像を収集できるようになり、現場業務のDXが進展することが期待されている。従来、深層学習などのAIを使った映像解析は、映像処理や深層学習の演算を得意とする高価なGPUサーバーを、ピーク時の処理負荷を満たす規模で各現場に設置する必要があるため、工場全体に設置した多数のカメラ映像を解析するには、莫大な機器コストがかかっていた。また、映像に映る解析対象の増減や、現場業務の作業変更に伴うAIのロジック変更などにより、映像解析の処理負荷がシステムの運用開始後に大きく変動した場合に、システム構成を容易に変更できないなど運用面においても問題があり、大規模な映像解析の実施が困難となっていた。株式会社富士通研究所は、作業員のモニタリングによる作業効率化や品質向上などの加速が期待される製造現場の業務変革に向け、ローカル5Gを活用して広大な工場全体に設置される多数のカメラで取得した大量の映像データを短時間で解析可能なシステムの自動設計技術を開発した。同技術は、一連の映像解析処理を入力処理や色調整などの前処理、AIによる解析処理と、表示などの後処理に分割してコンテナ化することで、処理ごとに分散してリソース要件を満たす適切なサーバーに自動で配備することができる。リソース要件については、必要なCPUのコア数やメモリ量だけでなく、CPUのクロック周波数やGPUの性能など、従来の自動コンテナ配備技術では対応できない、映像処理特有の要件までパラメーターとして扱えるようにしている。その上で、エッジとデータセンター間の通信量が最も少なく、かつ各処理のリソース要件を満たすように、各コンテナの配備先をエッジとデータセンターにある様々なスペックのサーバーの中から自動で判断する。これにより、エッジとデータセンターを連携させたシステムにおいて、解析性能を保証しながらエッジに設置するサーバー台数および処理性能を必要最小限に抑えることができ、サーバーを含むシステム全体のコストを軽減する。さらに、複数のコンテナを1つのGPUで同時に実行可能にし、各コンテナでの処理におけるリアルタイム性の要求度合いに応じてスケジューリングすることで、データセンターのGPU利用率の効率化も実現する。今回、作業品質の強化を目的に、組立工場を想定した実験環境において、16台分のFull-HDカメラで撮影した作業員の行動の映像から、組付け作業ミスと運搬物の滞留をAIで検出する映像解析システムを構築した。16台のエッジサーバーとデータセンターを連携させたシステムを同技術で設計することで、数秒で作業ミスなどをフィードバックでき、かつサーバーを含むシステム全体のコストを最大3分の1まで削減できることを確認した。

エッジとデータセンターの連携によるシステムコスト削減効果富士通研究所は今後、ローカル5Gを導入した工場など様々な製造現場での同技術の実証を進め、2022年度内に実用化を目指すとしている。プレスリリース提供:富士通研究所

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