森高千里の天才的な歌詞センス!シュールで中毒性のある言葉たち 1988年 3月25日 森高千里のセカンドアルバム「ミーハー」がリリースされた日

自ら作詞、直球ストレートでシュールな言葉をチョイス「ミーハー」

「♪ 私がおばさんになっても」と歌い、今に至ってもまったくオバさんになっていない森高千里。

デビュー当時は女優やタレント、歌手として幅広く活動。その美少女ぶりが話題になったが、少しずつ歌手の道へ。1988年に4枚目のシングル「ザ・ミーハー」で自ら作詞も担当。あまりにも直球ストレートでシュールな言葉のチョイスに、世間をざわつかせた。

翌1989年には「ザ・ストレス」という、これまた度肝を抜くタイトルの歌詞を書いて、「この曲は一体何なんだ?」と、誰もが森高千里という存在に驚きを隠せなかった。

コスプレだけじゃない! 森高千里はアーティストであり表現者

この頃から、ほとんどの曲で作詞を手がけるようになった森高。見せ方もとことんこだわり、いわゆる “コスプレ” の元祖といってもいい。ミニスカートは彼女のシンボルマークとなり、細くてすらりと伸びた美脚ぷりはさながらリアルバービー人形。

そんなステージの裏側では、毎回衣装合わせの際に、ミリ単位で “一番美脚に見える丈” を探しては、スタイリストとともにピンを打っていたという徹底ぶり。

今でこそ、アイドルは自分の意志で発言し、セルフプロデュース力を持つのが当たり前だが、当時のアイドルといえば今より断然 “受け身” であり、与えられた役割を全うするというのが使命だったように思う。だから、きっと周囲の大人たちも、森高千里を従来通り美少女アイドルとして育てようとしていたはずで、きっとこうしたセルフプロデュース能力の高さに触れたり、初めて作詞を手がけた「ザ・ミーハー」の仕上がりを見たときは、そのただならぬ独特なセンスに、さぞかし驚いたことだろう。

森高はアイドルというよりも、アーティストであり表現者だった。そして、その大きなポイントのひとつが “作詞の魅力” にあるのだと思う。

シュールな中毒性、斬新で衝撃的な森高千里の作詞の世界

セカンドアルバム『ミーハー』には同名の曲が収録されており、アルバムリリースから1ヶ月後には「ザ・ミーハー(スペシャル・ミーハー・ミックス)」としてリミックスされた楽曲が4枚目のシングルとしてリリースされた。

 お嬢様じゃないの
 わたしただのミーハー!
 だからすごくカルイ
 心配しないでね

と、自らをミーハーで軽いオンナと自虐ネタをぶっ込んで、「どいつもこいつもだめ」と周囲にダメだしする歌詞は斬新で衝撃的だ。

続く「ザ・ストレス」では、「♪ たまる ストレスがたまる」というフレーズがループ。「♪ ストレスが地球をだめにする ストレスが女をだめにする ストレスが…」と繰り返し歌い上げていく。この曲は森高本人が腹痛で入院中に書いた曲だとか。一体、どれほどのストレスを抱えていたのだろうか…。

1990年リリースの「臭いものにはフタをしろ!!」に至っては、偉そうにうんちくを語ってくる男性に向かって、「♪ あんた一体なにがいいたいの 私をバカにして そんないい方平気でしてると おじさんと呼ぶわよ」と、こっぴどくコケにしてディスる。この爽快感こそ森高ワールド。もうたまらない!!

「ハエ男」(1993年)ではさらに強烈。「♪ あいつはいつも飛んでる ハエ男 上司には すりすりすり手をすり 会うたびに すりすりすりすりすり」と、上司に媚びる人を延々こき下ろしていくから笑いが止まらない。

若者達の代弁者? 聴き終わったあとの爽快感と共感度の高さ

どの曲も女性目線の歌詞ではあるが、性別を問わず、誰もが社会に出て経験する膨大なストレスや、説教好きのおじさんという存在、上司に媚びをうる人の姿が赤裸々に描かれていて、とにかく聴き終わったあとの爽快感と共感度はリアルすぎるくらいリアル。

森高の歌詞は当時の若者達の代弁者でもあったと思う。加えて、この人形のような美少女がこうした歌詞を歌うことが、今でいうギャップ萌えでもあったと思う。

一方で、オリコンチャート2位を記録したバラードの名曲「雨」(1990年)、故郷を離れられず恋を諦める姿を描いた大人の女性像を歌った「渡良瀬橋」(1993年)など、情景描写の素晴らしさと切なさの詰まった淡々とした王道な歌詞も描ける森高の才能といったらない。

九州出身の女性ならではの “芯の強さ”

森高千里の歌詞の世界に共通しているのは、主人公の “精神的な強さ” だ。どの曲の主人公も、地球がダメになるほどのストレスを抱えながらも、嫌なおじさんに出会おうとも、“闘う強さ” がある。また、バラード曲の中でも「故郷を捨てられず恋を諦め、その場所で生きていこう」と決める “心の強さ” がある。

そこから、森高自身がもっている、九州の女性ならではの “芯の強さ” のようなものを感じずにはいられない。一本筋の通った強い意志と、聴いているうちに気分爽快にさせてくれる森高ワールドの歌詞にぜひ注目して聴いてほしい。

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