追悼・古賀稔彦さん 記者の〝プロレス的思考〟は笑顔で見抜かれた

18年8月、第15回全国小学生学年別柔道大会の会場で記者の取材に応じる古賀さん

古賀稔彦さんの訃報にショックは大きい。記者にとって思い出があまりに多すぎるからだ。

高校時代にテレビの中で見た古賀さんは、団体戦で100キロ以上ある巨漢に小内巻き込みを決めて快勝。当時、柔道をやっていた少年は誰もが憧れる「三四郎」だった。

古賀さんがまだ現役ばりばりだったころ、プライベートの出来事を記事化したため、一時は険悪な関係になった。会見に出席すると、畳の上と同じ鋭い目つきでにらまれ、思わず目をそらした記憶がある。

その後に全く会話をしてもらえなかったが、ある日のこと、どうしてもうかがいたい話があり、意を決して古賀さんを〝出待ち〟した。張り詰めた空気を感じながら、待つこと数時間。古賀さんが出てきた。「ご無沙汰しております」と声をかけると、驚いたのも一瞬に満面の笑み。「おー、どうしたの? 久しぶりだね~」と取材に応じてくれた。あの時の鋭い目つきはすっかり忘れたかのように、いつもの明るい古賀さんがいた。

最後にお会いしたときの会話もそうだった。

古賀さん「久しぶり。最近は何してるの?」

記者「今はプロレスのほうに…」

古賀さん「今じゃないでしょ、昔からずーっと、プロレス。(東スポは)プロレスだもんね!」

取材における東スポ記者独特の〝プロレス的思考〟はすっかり見抜かれていたようだ。古賀さんの笑顔に引き込まれ、記者も大声で笑ってしまった。

ストイックな柔道への姿勢と対照的に、気さくな素顔。柔道界に〝古賀信者〟が数多いのもうなずける。もう一度お会いして、お話ししたかった。合掌。

(運動部デスク・初山潤一)

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