「苦しむ人の手助けに」 発達障害 漫画で表現 長崎県内在住 なずなさん初著書

「発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい」の表紙

 発達障害があり、漫画家を目指している県内在住の女性、なずなさん(19)が昨年末、初の著書「発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい」(ぶどう社刊、1650円)を出版した。これまでに経験してきた「パニック」などの症状や苦労、自身で模索した対処法などについて、自筆の漫画と文章で紹介。なずなさんは「同じように苦しんでいる人の手助けになればうれしい」と話す。
 なずなさんは5歳の時に「高機能広汎性発達障害・注意欠陥多動性障害(ADHD)傾向」と診断された。意思に反して頭に浮かぶ考えやイメージを振り払おうと、同じ行動を繰り返す「強迫性障害」を小学4年で発症。中学時代は人との関わり方に悩み、不登校も経験。昨年春、県内の通信制高校を卒業した。
 小学生の頃は発達障害が理解できなかったというが、家族や周囲の支援で、中学1年ごろから少しずつ自分を受け入れ、物事を肯定的に考えられるように。中学2年の時、苦しい思いを大好きな漫画で表現し始めた。高校までに描きためた漫画を精神科の主治医、松本喜代隆医師に見せたところ、本にするように勧められ、出版が実現した。
 同書は「私のやっかいな特性と対処法」など5章で構成。強迫性障害やパニックをはじめ、日常のこだわり、外出時・コミュニケーション時の苦労、不登校に陥った当時の様子など18のテーマについて、それぞれ短編の漫画と文章で紹介。テーマごとに松本医師の解説文も収録している。
 絵柄は愛らしいが、なずなさんは頭や体の中で起こる数々の症状、困難を、独自のイメージで表現しており、障害の実態がリアルに伝わる。松本医師は「発達障害を理解する上で、何が(本人の)助けとなり、どのような言葉が苦しめているのか、といったことを気づかせてくれる」と語る。
 高校生の時に「漫画家になりたい」という夢を抱いたなずなさん。現在はファンタジー系の漫画の執筆に挑戦している。「本が多くの人に手に渡ると思うと、緊張、不安もあるが、読んでもらえるのはうれしい」と笑顔を見せた。
 「発達障害の私の頭の中は忙しいけどなんだか楽しい」はA5判128ページ。県内の書店で購入可能。問い合わせはぶどう社(電03.5779.3844)。


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