コロナ禍、小澤征爾音楽塾が伝えたもの

コムデ前でゲリラコンサート、特別公演配信も

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「小澤征爾音楽塾 特別公演 2021」より (C)大窪道治/2021SeijiOzawaMusicAcademy

 コムデギャルソンのデザイナー川久保玲さんと言えば、1981年にパリ・コレクションで初のショーを開催し、それまでの「美」の概念を過激なまでに否定して、「黒の衝撃」を巻き起こした前衛ファッションの旗手として知られる。だが彼女の服を通奏低音のように貫くのは、少女のような清楚さと上品さ、そして薄く繊細なガラスのような透明感。そのことを改めて感じさせてくれたのは3月半ば、東京・青山のコムデギャルソン本店で開かれた「小澤征爾音楽塾(小澤塾)」の今年の塾生である若手女性音楽家4人によるサプライズ・コンサートだ。(共同通信=三好典子、須賀綾子)

 川久保さん自身もデザインに携わった店の1階でゲリラ的に開催されたこのミニコンサートに登場したのは、塩加井ななみ、有働里音(ともにバイオリン)、三国レイチェル由依(ビオラ)、黒川真洋(チェロ)によるカルテット。コムデギャルソンのワンピースやセットアップなど黒を基調にしたドレスに身を包んだ4人が、オーストラリア民謡の「ワルチング・マチルダ」やCMなどで耳なじみのあるエリック・サティの「ジムノペディ」など約20分にわたって演奏、コムデギャルソンを訪れた客や、道行く人々が足を止めて聞き入った。

 小澤塾は、指揮者の小澤征爾さんが2000年に始めた若手音楽家の教育プロジェクトだ。オーディションで選抜された10~20代の演奏家たちでオーケストラを編成、オペラや交響曲を通して音楽づくりを学び、公演で〝成果〟を披露する。コロナ禍で昨年は中止されたが、「なんとか仲間たちと生の音楽を」という小澤さんの思いを受け、今年の塾生(27人)に、講師陣(7人)、今やプロのオーケストラなどで活躍するOB・OG(18人)も加わった「特別編成オーケストラ」で3月23日、「小澤征爾音楽塾 特別公演 2021」(東京文化会館)が開かれた。

 プログラムは、ベートーベン「エグモント」序曲、チャイコフスキー「弦楽セレナード」、ベートーベン「交響曲第7番」で、指揮は、オーボエ講師として塾創設時から一翼を担い、小澤さんから指揮指導を受けた経験もある宮本文昭さん。気迫あふれる宮本さんの指揮に導かれ、オーケストラ一人一人の情熱みなぎる、熱のこもった響きが大ホールの空気を振るわせる。若々しいエネルギーや高揚感は小澤塾の真骨頂だ。終演後、多くの観客が立ち上がり、拍手を送った。

 05年から講師を務めるビオラの川本嘉子さんは演奏しながら「あたかも小澤さんが目の前にいるかのように感じていた」と言う。「塾での学びが腹の底に息づいている」OB・OGたち、彼らの背中から小澤さんの思いやエネルギーを受け取る塾生たち―。「コロナの状況や不安要素はいろいろあったけれど、終わってみたらやっぱり小澤塾ってすごい、って思えるんですよね」と感慨深げだ。小澤さんは自宅で公演をライブ配信で楽しんだそうで、終演後、講師たちにオンラインで「ありがとう」と感謝の言葉を伝えたという。

 この演奏会は3月31日まで見逃し配信で視聴できる。視聴券は1000円。

視聴券の購入はhttps://tiget.net/tours/ongakujuku