鷹・上林誠知はなぜ開幕1軍から漏れたのか? 工藤監督と小久保ヘッドの思惑とは…

ソフトバンク・上林誠知【写真:藤浦一都】

グラシアルの左翼起用にメドが立ったことも決断の一因に…

ソフトバンクの上林誠知外野手が出場選手登録メンバーから外れ、3月26日の開幕戦を2軍で迎えることになった。25日の全体練習から1軍本隊を離れ、2軍に合流した上林。工藤公康監督は「彼はレギュラーとして出てナンボの選手。小さくなってほしくない」と語り、開幕2軍スタートを明言した。【福谷佑介】

2月のキャンプ、オープン戦にかけて打撃面でレギュラー奪取を猛アピールしてきた上林。オープン戦終盤は勢いにかげりが見えたものの、チームトップタイの2本塁打を放ち、栗原陵矢捕手と熾烈なレギュラー争いを繰り広げていた。走力や守備力にも定評がある上林。仮にスタメンの座を手にできなくとも、ベンチにいれば大きな戦力となるだけに、2軍スタートは驚きといえる決断だった。

なぜ上林は開幕2軍スタートとなったのか。工藤公康監督は「彼はレギュラーで出てナンボの選手。代打や代走、守備固めとして使う方法も確かにあります。彼にはレギュラーとして奪ってもらいたい、という思いがある。上で調子が悪くなった人がいたら、上林くんが成績を残していれば、すぐに入れ替えよう、となって、スタメンで出る」と説明した。

ファンからの期待度も高い上林が開幕2軍になったことにはいくつかの理由がある。まずは不透明だったジュリスベル・グラシアル外野手の状態だ。オープン戦終盤に実戦に復帰したグラシアルだが、右肩の状態もあって守備には就いていなかった。グラシアルが左翼を守れないとなると、デスパイネとグラシアルのどちらかがDHに入り、左翼のポジションが空き、そこに栗原、右翼に上林を起用することができた。

だが、グラシアルは23日からのウエスタン・リーグのオリックス戦で左翼の守備に就き、グラシアルの左翼起用にメドが立ったと首脳陣が判断。これにより、開幕戦の左翼はグラシアルに固まり、栗原と上林のどちらかが右翼として起用されることになった。

レギュラーを争ってきた上林と栗原だが「栗原くんでスタートしてみよう」

上林か栗原かの二者択一で、首脳陣が導き出した答えは栗原の開幕スタメンだった。「コーチたちみんなの期待もあるし、去年の実績もある。オープン戦で結果は出てないけど、まずは栗原くんをスタートでいきたいと言うことだったので、栗原くんでスタートしてみようとなった」と工藤監督。これにより、上林が開幕スタメンから外れることが決まった。

ただ、上林はスタメンで起用できなくともチームの戦力になれる選手だ。走力もあり、守備力は12球団でも屈指のものがある。代打や代走、守備固めとして十分に起用できる。だが、工藤監督と小久保ヘッドは、これを良しとせず、上林をあえて2軍で調整させることにした。

開幕を1軍で迎えたとしても、ベンチスタートになる。指揮官の言葉通り「小さくまとまってほしくない」というのも1つであり、さらには、試合で打席に立つ機会は必然的に少なくなるため打撃の状態も上げにくい。そうであれば、2軍できっちりと試合に出て打撃の調子を整え、主力の不振や怪我人が出て、いざチャンスとなった時に一気に定位置を奪えるだけの状態にしておいてもらおう、という考えなのだろう。

工藤監督は「(小久保)ヘッドも考えに考えて、熟慮しての決断だと思う。彼の背中を押してあげること、理解してあげることが僕の仕事だと思うので、いいよ、と。本人にも『レギュラーとして出るのと、ベンチで出るのとどっちがいいんだ?』と聞いたら『レギュラーで出たいです』と思いも聞きました」という。小久保ヘッドコーチが熟慮に熟慮を重ねて提案してきたプランであることも明かしていた。

結果を残してイスを奪い、文句なしのレギュラーになってほしい――。そんな首脳陣からの高い期待があるからこそ、あえての開幕2軍スタート。工藤監督と小久保ヘッドコーチはこのような思惑で、苦渋の決断を下したのだった。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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