「生理の貧困」女子学生が上げた声が社会を動かした

毎日新聞解説委員・元村有希子さん

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新型コロナの影響で経済的に困窮した女性が、生理用ナプキンを買うことを躊躇したり、交換する回数を減らしたりという実態が明らかになりました。この「生理の貧困」について、RKBラジオ朝の情報ワイド番組『櫻井浩二インサイト』木曜日のコメンテーター・元村有希子さん(毎日新聞論説委員)が解説しました。

政府も予備費を使って、生活に苦しむ女性に、NPOを通じて生理用品を無料配布しようと、対策に乗り出しています。でも「生理の貧困」はきのうきょう始まった問題ではありません。

そもそも、女性にとって生理は負担が大きなもの。12、3歳から50代まで、月に一度、数日間の生理期間を合計すると、約3000日=8年という計算になります。1日数回ナプキンを交換する必要があるので、生涯では1万枚を消費するのです。1枚数十円で売られているので、金額の負担は50万円にのぼります。

金銭的な負担だけではありません。生理が重くて仕事に行けないとか、休もうにも職場に生理休暇制度がないとか、それが原因で解雇される、セクハラに遭うとか、いろんな負担がのしかかってくるんです。ですから「生理の貧困」というのには“ただ単にコロナになって収入が減って、ナプキンが買えない”というだけではない、もうちょっと深いものがあるのではないかと思います。

長年、女性にとって生理は恥ずかしいもの、隠すもの、という風潮がありました。それを変えたのが国際基督教大学に通う女子学生。この実態に憤慨して、この問題を卒論のテーマにしてことがきっかけで、社会運動にもつながりました。

ネット上で「#みんなの生理」で出てきますが、生理用品を“生活必需品”として軽減税率を適用し、消費税を8%にしようと訴えています。女子学生がとったアンケートによると、回答した人の2割の人が「生理用品を買うのを、お金がなくて躊躇した」と回答。37%の人が「1日5~6枚交換しなければならないのを、1枚で我慢した」と回答しています。

実際に、埼玉県八潮市議会では消費税率を8%にしようという意見書を採択したり、大手コンビニエンスストアチェーンのファミリーマートでは、今月9日から年末まで、生理用品の価格を2%引くという、事実上の軽減税率扱いにしたりという動きが始まっています。一人の女子大生が上げた声が、着実に社会を動かしていて、政府の動きもそれに連動したものと言えるでしょう。

海外に目を向けると、ケニア、カナダ、マレーシア、インド、イギリス、オーストラリアでは生理用品は非課税。スコットランド、ニュージーランドでは無料、もしくは学校で無償で配られています。政治の中に女性の声が入りやすい国ほど、そういうことが進んでいるといえるのではないでしょうか。

ただ、これは女性だけの問題ではなくなってくるでしょう。例えば高齢者がつける「おむつ」はどうでしょう。これも軽減税率が必要なんじゃないか?って話になってきて、それはつまり、女性のためというものから、だんだん“弱い立場の政策”ってことになってきて、これは男性にとっても他人事ではない動きになってきます。

櫻井浩二インサイト

放送局:RKBラジオ

放送日時:毎週月曜~金曜 6時30分~9時00分

出演者:櫻井浩二、田中みずき、元村有希子

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