【F1技術解説】テストで明るみに出た各マシンの秘密(1)規約の網を巧妙にすり抜けたマクラーレンのディフューザー

 オンラインでの2021年F1新車発表では巧妙に隠されていたアップデート部分が、バーレーン直前テストで砂漠の炎天下にさらされた。失われたダウンフォースを回復しようと、各チームが様々な工夫を凝らしている中で、最も注目すべき5つの変更点を、F1i.comの技術分野を担当するニコラス・カルペンティエルが紹介する(全2回)。

1)ディフューザー規定変更に賢く対応したマクラーレン

 開幕直前テストで技術的に最も注目を集めたのが、マクラーレンがディフューザーに施した工夫だった。FIAはF1マシンがこれ以上速くならないよう、ダウンフォースの大幅な削減を目論んだ。ディフューザー性能を落とすため、内部を分割するストレーキの高さを基準面から50mmに制限。それによってディフューザー内部の整流効果を落とし、ダウンフォースを減らすためだった。

マクラーレンF1マシンMCL35とMCL35Mのディフューザー

 するとマクラーレンの技術陣は、従来のストレーキ自体は確かに短くしたが、同時にフロア後端からディフューザーへと伸びる部分の形状を変え、去年までと同じ低い位置でのストレーキの役目を持たせようとしたのだ(写真上:黄色矢印参照)。技術規約ではストレーキの高さ50mmの制限は、車体中心線から左右250mmまでは除外されるため、マクラーレンはその制限を巧妙にすり抜けたといえる。

2)メルセデスの創造的なフロア

 今季の技術規約は、フロアにも大きな制限が加えられた。フロア後端の面積が減ることによるダウンフォース減少に、各チームはさまざまな対抗策を講じている。たとえばメルセデスとアストンマーティンは、フロア下面に波状パーツを取り付けた(写真下:黄色矢印参照)。

 波状パーツに当たった気流はより高速化し、さらに細かい渦が発生する。その結果、コークボトル状に絞り込まれたサイドポンツーン後部からリヤウィングへと跳ね上がり、ダウンフォース増大に貢献する。さらにリアタイヤで生じた乱流が、フロア下へ流れ込むことを防ぐ効果も狙っているようだ。

アストンマーティンAMR21とメルセデスW12のフロア

 リヤタイヤによる乱流防止については、メルセデスは3日間のテストの間に様々な形状のデフレクターを試していた(写真下:赤矢印参照)。さらに内部に3箇所の気流の通り穴の開いた箱状のパーツも加えられた(黄色矢印参照)しかしリヤ挙動は去年型に比べ、かなり不安定になっているようだ。

メルセデスW12 リヤタイヤ前のデフレクター

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