【「でっけぇ風呂場で待ってます」脚本担当の人気コント師インタビュー③】かが屋・賀屋壮也☆ドラマ脚本の経験で身についたのは…根性!?

北山宏光と佐藤勝利がダブル主演を務め、人気コント師たちがリレー形式で脚本を担当している銭湯コメディー「でっけぇ風呂場で待ってます」(日本テレビ)。今回は、かが屋・賀屋壮也へのインタビューをお届け。

「R-1グランプリ2021」で3位となり、先日コンビ復活も発表され、ますます活躍に勢いをつけている賀屋。脚本での苦労や現場の感触、そして今回獲得した“力”とは――?

――賀屋さんは「でっけぇ風呂場で待ってます」で第2話、6話、9話の脚本を手掛けていらっしゃいますが、ドラマ脚本は初めてではないんですよね?

「そうなんです。『有吉の壁』でご一緒している(本作の企画・演出の)橋本(和明)さんに、『ドラマをやりましょう』とお声掛けいただいて、昨年Huluで『恋、ランドリー。』というドラマを書いたのが最初です。荒牧慶彦さんとわれわれかが屋の3人が出演した、コインランドリーを舞台にしたワンシチュエーションの作品で。1話につき5~10分程度で全8話、すごく楽しくできました。次にお話をいただいたのがこの『でっけぇ風呂場で待ってます』です」

――2作目ともなると、脚本はスムーズに書けましたか?

「最初に書いた第2話の脚本は結構すんなりいきました。それでちょっと油断したんですよね。第6話はかなり苦労しました。『あれ、いけるじゃん?』みたいな感覚がどっかにあったんだと思います。で、調子に乗ってしまって、橋本さんはじめスタッフの皆さんにはそれを見抜かれていたんでしょうね、やっぱり。何度も書き直しました」

――今作では脚本を賀屋さん、じろうさん(シソンヌ)、秋山寛貴さん(ハナコ)、水川かたまりさん(空気階段)と4人のコント師が交代で書かれていますが、お互いに話し合いは?

「最初にちらっとしたくらいで、具体的なものはほとんどしていないんですよ。だから、それこそ『有吉の壁』とか、お仕事の場でかたまりさんや秋山さんに会った時に『どんなの書いてる?』って探り合いをしてました(笑)。その時の僕らの口癖は『難しいよね~』でした」

――皆さん、難しさを感じていた?

「じろうさんは何本もドラマを経験されていますけど、僕もまだ2本目、秋山さんとかたまりさんは初めてだったので、どこか構えていたというか、かしこまっていたところがありました。僕は第1話のじろうさんのキャラクター造形を参考にしつつ、第2話では主人公2人の違う面を見せるように意識して書いたんですよ。そういう幅を見せたら『ここまでやっていいんだ』ってなるかなと思ったんです。でも、のちのち他の人の脚本を読んだら、全員面白いし、特にかたまりさんはめちゃくちゃでしたね。そこまで自由にやるのかって思いました(笑)」

――撮影現場での、松見芯を演じる北山宏光さん、梅ヶ丘龍大を演じる佐藤勝利さんの印象は?

「北山さん、芸歴的には僕より大先輩なんですよ。なのに『僕、コメディーあんまりやったことがないのでちょっと不安なんですけど、ここの言い方とかどうしたら面白くなりますかね?』って聞いてくださったりして、感激しました。勝利くんからはお笑いやコメディーがすごく好きなんだということが伝わってきました。すごく悩んで、たくさん質問してくれて『かわいい!』って思いました(笑)。勝利くんの真っすぐさ、真面目さ、純粋さは、今回携わったみんなが感じていると思います」

――少し話がずれますが、そんなお笑い大好きな佐藤さんと、ドラマではなくコントをやるとしたらどんなものを書きたいですか?

「男前の人って、だいたい性格が良い人が多いんですよ。だから、あんな男前なのに変な人っていうのをやってほしいです。めちゃくちゃ性格が悪いとか、情けないのとかもいいですね。かが屋のコントに『自転車』というのがあって。加賀(翔)くんがコンビニ前に自転車を置いて入っている間に、その自転車の前で男女の修羅場が始まってしまうっていう。で、カップ麺にお湯を入れて手に持った加賀くんが、どうしようもできずにその様子を見ているっていうコントなんですけど。普段僕がやっている修羅場の男を勝利くんにやってほしいですね。『やだよ~、なんでいくの、行かないでよ~』とか言ってほしい。勝利くんにそんなこと言わせる女性ってどんな人なんだろう(笑)」

――ご自身も「塹江」という役で出演されていますが、ドラマ内でのポジションやキャラクターはどのように考えましたか?

「塹江は仕事もせず、親の仕送りで生活しているのにプライドだけは高いというキャラクターなんですけど、最初はじっとりと地味に気持ち悪いやつだったんです。でも、第1話を見たら北山さんが演じる松見も、勝利くんが演じる梅も、シソンヌ・長谷川(忍)さんの瀧さんも素晴らしくて、塹江はここに入るには弱いぞってなったんですよ。そこで、塹江にウザさとかムカつく感じを付け足していって、ルー大柴さんみたいなしゃべり方にして…って癖をつけていった結果、派手な気持ち悪さになりました。しかもいざ撮影に挑む時、すごく高級な、ハイブランドの衣装を用意してくださったんですよね。ブランドの方には申し訳ないですけど、僕が着ることで本当にウザい感じが出せて良かったなと思います(笑)」

――今回脚本を手掛けた回の中で、印象深いシーンなどはありますか?

「第2話で、ずっと一緒にやってきた事務所の先輩のパーパーさんに出ていただけたのは感慨深かったです。あの2人、前は本当に仲が悪くて…(笑)。カラオケでネタ合わせする時、2人なのにパーティールームを借りて、その端と端でやるくらい。それが最近やっと、信頼し合って目を見て話せるようになったということで、カップルYouTuber役をやってもらいました。撮影現場で2人で片手ずつでハートを作っている写真をあとから見て、ちょっと泣きそうになりました(笑)」

――第9話では光石研さんやふせえりさんなど、魅力的な俳優さんも出演されますね。

「本当に、話し合いの中で冗談みたいに出したお名前の方々が実現して、すごくありがたいです。ふせえりさんは僕が『ふせえりさん、大好きなんですよね~』って言っていたら本当に来てくださることになって。そのふせさんに撮影の時、『(脚本)面白いね、ドラマやりなよ』って言っていただけて、本当にうれしくて最高でした」

――今回はドタバタのシチュエーションコメディーということもあって、かが屋のコントとは違った、にぎやかでテンポの速い作品になっていますね。

「ボケるし、ツッコむし、本当に盛り盛りで考えたので、かが屋のコントとは全く違いますね。でも、これはこれで新しい挑戦だと思ってやれましたし、テイストが全然違っても、かが屋が考えているんだからかが屋にはなるでしょ、とは思っていました」

――かが屋のコントにはずっと無言の時間があったり、表情の変化をじっくり楽しむようなものもありますが、ああいったコントにもしっかり台本があるものですか?

「いや、台本はないんですよ、かが屋には。2人でとりあえずやってみて作るので、台本に起こすことがなくて。テレビでネタをやらせていただく時に、台本の提出が必要になって。初めて文字にした時は苦労しました。で、その文字に起こす役割が、2人の間では僕だったんです。だから自然と『恋、ランドリー。』の脚本を書く時にも、アイデアは2人で出して、書くのは僕ということになって。分量を書くことについてはその時に経験していたので、今回もなんとかなりました」

――賀屋さんは最近、1人コントもやっていらっしゃいますが、そのコントも文字にはしていないですか?

「ピンネタは飛ばすわけにはいかないから、文字に起こしています。普段2人でやる時は、きっかけがあるから普通に思い出せるんですよ。でも1人になったら頼れるのは自分の脳みそだけなので、飛んじゃったら終わりで。しっかり覚えてやる、というのは2人の時とは違うところですかね。でも、それもこのドラマの脚本をやっていたから、書くのが苦じゃなくなったというのはすごく大きかったです」

――ドラマの脚本をやったことが、お笑いにも役立ったわけですね。

「そうです。でも、脚本をやらせてもらって一番身についたのは根性かもしれません。何度も書き直しを経験して、負けない気持ち、くじけない気持ちを手に入れました」

【プロフィール】

賀屋壮也(かや そうや)
1993年2月19日、広島生まれ。魚座。B型。2015年に加賀翔とかが屋を結成。「有吉の壁」(日本テレビ系)、「爆笑問題&霜降り明星のシンパイ賞!!」(テレビ朝日系)、「かが屋の鶴の間」(RCCラジオ/RSK/BSS)などに出演中。

【番組情報】

「でっけぇ風呂場で待ってます」
日本テレビ
月曜 深夜0:59~1:29


【あらすじ 第9話】

梅ヶ丘(佐藤)、瀧(長谷川)らが松見(北山)の誕生日サプライズの練習をしていると、突然、個性強めの女性(ふせ)がやって来る。なんとその女性は、松見の母親だった。松見は15年前に出たきり家に帰っておらず、母親に仕送りを続けていたのだと言う。松見の母親は再婚が決まり、松見をシンガポールに連れて行くと言い出すが…。

取材・文/釣木文恵 撮影/大槻志穂

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