「卒業、悔しい」 熊本市の中学でいじめ 男子生徒、心に傷

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卒業証書を前に、同級生からのいじめに苦しんだ中学時代について語る男子生徒=熊本市

 「これで中学も終わりかと思うと、悔しかった」。熊本市立中学の3年男子は、12日の卒業式をこう振り返った。勉強に、部活にと希望を抱いて進学したはずの中学生活は、いじめによって、心に深い傷を残した。「同じような思いをする人をなくしたい」。そう願い、熊日の「SNSこちら編集局」の取材に応じてくれた。

 あどけなさが残る男子生徒の語り口はしっかりとして、落ち着いた雰囲気だった。だが、中学での3年間に受けたいじめ行為を振り返ると、目に涙がにじんだ。

 いじめは、前触れなく始まった。入学間もない2018年4月、同級生のLINE(ライン)グループから外された。理由が分からず、戸惑った。半年が過ぎた頃、今度は複数の同級生が、名前をもじったあだ名で呼び始めた。少し嫌だったが、「仲良くなるためなら」と我慢した。あだ名でからかう同級生は日増しに増え、話したこともない生徒にまで広がっていった。

 同級生らは、男子生徒の何げない行動をネタにし、笑うようになった。複数の同級生に囲まれ、耳元で奇声を上げられたこともあった。からかい行為が日常となり、「ばかにされ続けることが悔しくて、つらくてたまらなかった」。よく笑っていた生徒は、ふさぎがちになっていった。

 「なんかあったとやろう。言わんね」。2年生の夏休みが明けた19年9月、学校に行きたがらない生徒を心配した母親から何度も聞かれ、胸の内にふたをしていた思いがあふれた。

 親に心配をかけたくなかったし、いじめの対象になっていることが「恥ずかしい」と思っていた。だが限界だった。一気にこれまでのことを吐き出した。

 その日、母親は学校に相談した。学校側は一連の行為をいじめと捉え、複数の加害生徒を注意し、男子生徒にも謝罪させた。

 ただ、その約2カ月後、欠席が続いていた男子生徒が登校すると、別の同級生から「不登校野郎」などと浴びせかけられた。生徒は眠れない日が続き、食欲もなくなり、一時は体重が20キロ以上落ちた。

 「生きているのがつらい」。突発的に刃物で腕を傷つけようとしたり、タオルで自らの首を絞めようとしたりするようになった。3年生になった20年7月。自宅2階で一緒に遊んでいた友人らの目の前で飛び降りようとして、友人らに制止された。それから約2カ月間、入院した。

いじめに苦しんできた男子生徒の母親が被害の状況を記したメモ=熊本市

 ■校長「止められなかった」 指導も新たな加害生徒続々

 「重ねて指導してきたにもかかわらず、いじめを止められなかった」。熊本市立中学での3年間、いじめに苦しんできた男子生徒が通った学校の校長は、熊日の取材に応じ、じくじたる表情で言葉を振り絞った。

 学校側は市教育委員会と協議し、3年生になった男子生徒が入院する前の2020年6月時点で、いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」と捉え、加害生徒らへの調査を始めていたという。

 ただ、対応に疑問もある。同法は、いじめにより、心身に重大な被害が生じた疑いや、相当の欠席を余儀なくされた場合を重大事態と定義。男子生徒の欠席数の合計は2年の2学期が終わる19年12月末時点で、重大事態の目安となる年間30日だった。

 市教委は「体調不良を理由にした欠席もあったようだが、いじめが要因とみられる欠席が何日も続いた時点で、重大事態を疑い、調査すべきだった」と取材に答えた。

 学校側は、いじめ行為を把握するたびに加害生徒に指導を続けてきた。しかし「冷やかし」は人を変えて続いた。それが男子生徒を追い込んだ。「学年集会でも何度も呼び掛けたが、一人一人の心に届く指導になっていなかったのだろう」と校長は真摯[しんし]に答えた。

 男子生徒の異変に、もっと早く気づけなかったのだろうか。その問いに、校長はうなずき「子どものSOSを教員が察知し、すぐに動けなかったところにも課題はある」と自戒を込め、語った。

 今月12日にあった卒業式を前に、校長は、いじめにかかわったすべての生徒の保護者との面談を始め、伝えた。「いじめに大小はない。謝ったから終わりではないんです。再発防止を約束してください」

 加害生徒と顔を会わせることのないよう、男子生徒は、別室で勉強を続けてきた。「友だちと卒業したい」。卒業式には、勇気を出して出席した。不安だった同級生からの冷やかしはなかった。いじめと向き合い、親身になってくれた教員らへの感謝の思いもある。そして、「ずっと味方でいてくれた友だちが救いだった」と言う。

 今の願いは一つ。「高校で、普通に青春したい」。それだけだ。(原大祐)
 
◇子どもの悩みに関する主な相談先▽県24時間子どもSOSダイヤルTEL0120(0)78310[なやみ言おう]▽熊本市子ども・若者総合相談センターTEL096(361)2525=今月末まで24時間対応。4月以降は平日の午前8時半から午後9時まで。