もし富士山が噴火したら… 相模原や小田原など神奈川県西部7市町にも溶岩流 火山防災協が新想定

富士山

 富士山の大規模噴火で溶岩が大量に流れ出ると、相模原市や小田原市など県西部の7市町にも到達する可能性があるとの新想定が、26日まとまった。活動火山対策特別措置法(活火山法)に基づく火山災害警戒地域に追加指定され、住民の避難対策などを検討することになる。山梨、静岡、神奈川の3県などでつくる富士山火山防災対策協議会が最新の知見を基に試算したところ、従来想定より影響範囲が拡大した。

◆33時間で山北に

 「溶岩流」は富士山噴火で予想される火山現象の一つ。千度前後の高温となるため、家屋や森林などを焼失させるが、一般的に斜面を流下する速度は時速数キロ程度と遅く、避難は可能とされる。

 国が2004年にまとめた富士山ハザードマップでは、麓を中心とした山梨、静岡両県の計15市町村にとどまっていたが、今回の改定で、静岡市や山梨県大月市なども含め3県の12市町にも到達する可能性が示された。協議会は火口の位置などに関する近年の調査成果を踏まえて約5600年間の噴火履歴を再評価し、最悪ケースの影響範囲をあらためて試算していた。

 その結果、山頂東側からの大規模噴火で溶岩が酒匂川上流方向へ流れ出すと、山北町に最短で33時間後に到達することが判明。その後さらに、南足柄市(80時間後)や開成町(128時間後)、松田町(148時間後)、小田原市(413時間後)、大井町(740時間後)に及ぶことが分かった。一方、北東側の火口から相模川上流方向に流れ出した場合には、相模原市緑区に最短で227時間後に溶岩が到達するとした。

 面積は計算されていないが、開成町はほぼ全域に溶岩流が及ぶ恐れがあり、山北、松田、大井の各町役場にも到達するという。

◆252地点で調査

 富士山から大量の溶岩が流出した最大規模の噴火としては、青木ケ原をつくった平安時代の864~866年の貞観噴火が知られている。国の想定では貞観噴火時の溶岩噴出量を7億立方メートルと見積もっていたが、協議会は2倍近くの13億立方メートルで試算。小規模噴火も含めて火口が想定される252地点からの噴出パターンを調べ、詳細な地形データを反映した溶岩流の影響範囲をマップ上に重ね合わせた。

 この日開かれた協議会では、速度の速い「火砕流」や積雪期に起きる「融雪型火山泥流」などについても見直した改定版ハザードマップを了承。検討委員長を務めた藤井敏嗣・山梨県富士山科学研究所長は「国や研究機関が富士山を監視しているが、(緊急時に)十分な余裕を持って情報を発信できるとは限らない。火山に関して正しい知識を持ち、噴火が起きても大きな災害にならないようマップを活用してほしい」と述べた。

◆溶岩流の到達が想定された自治体
・神奈川県(山北町、南足柄市、開成町、松田町、大井町、小田原市、相模原市)
・静岡県(富士宮市、富士市、裾野市、御殿場市、小山町、長泉町、三島市、清水町、沼津市、静岡市)
・山梨県(富士吉田市、鳴沢村、富士河口湖町、山中湖村、忍野村、西桂町、都留市、大月市、上野原市、身延町)

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