30代独身「つみたてNISAと毎月の貯金の比率はどれくらいが理想?」

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は36歳、会社員の女性。上手に資産形成していくには、つみたてNISAと毎月の貯金をどれくらいの比率で積み立てていけばいいのか知りたいとのこと。FPの高山一惠氏がお答えします。

毎月2万円ずつ、つみたてNISAと積み立て貯金に入金していますが、つみたてNISAを上限いっぱいにして積み立て貯金を減らしても大丈夫なのかを知りたいです。また、個人年金保険も気になっているのですが、始めた方がいいのかなど、アドバイスをお願いします。

【相談者プロフィール】

・女性、36歳、会社員、独身

・住居の形態:賃貸

・毎月の世帯の手取り金額:17万円

・年間の世帯の手取りボーナス額:40万円

・毎月の世帯の支出の目安:15万円

【毎月の支出の内訳】

・住居費:5万3,000円

・食費:2万円

・水道光熱費:1万円

・教育費:5,000円

・保険料:6,000円

・通信費:7,000円

・車両費:5,000円

・お小遣い:3万円

【資産状況】

・毎月の貯蓄額:4万2,000円

・ボーナスからの年間貯蓄額:20万円

・現在の貯蓄総額:160万円

・現在の投資総額:48万円

・現在の負債総額:0円


高山:ご相談ありがとうございます。つみたてNISAの積立金額を増やしても良いのか、個人年金保険に加入した方が良いのかについてのご相談ですね。積み立てをするにしても、どの商品にどれくらいの金額を積み立てたら良いのかは悩むところですよね。積み立て金額の内訳を考える際には、目的別にお金を整理してみることが大切です。

毎月の積み立て金額の理想はどれくらい?

そもそも毎月どれくらいの金額を積み立てたら良いのかわからないという方も多いと思いますが、理想とする積み立ての金額設定はライフスタイルによって変わります。

一般的には手取り収入の2割が理想と言われていますが、独身の一人暮らしの方であれば、手取りの1割が目安です。そうすると、ご相談者さんの場合、毎月の手取り収入が17万円ですから、手取り収入の2割以上の金額を貯蓄できているので優秀です。

その上で、毎月の積み立て金額の内訳をどうするかですが、預貯金がほとんどない場合は、投資ではなく、まずは堅実に貯蓄を積み上げることを優先させましょう。生活費の6カ月〜1年分ほどの貯蓄ができたら、投資商品を活用しての積立へ変更していくのが良いかと思いますが、ご相談者さんの場合、既に生活費の半年分以上の貯蓄はできています。ですから、つみたてNISAの金額上限金額の約3万3,000円にして、積立貯蓄を約1万円にするなど、積極的に増やしていくことを考えても良いと思います。

また、積み立て金額の内訳を決める際に、目的別にお金を整理してみることも大切です。というのも、貯める目的により、活用すべき金融商品は異なるからです。

目的別にお金を整理して内訳金額・商品を検討する

目的別にお金を整理する際には、「日々出入りするお金」「5年以内に使い道が決まっているお金」「10年以上先の将来のためのお金」に分けます。その上で、それぞれ別の口座や金融商品、方法で貯めるという仕組みをつくると効果的です。

日々出入りするお金とは、もしもの場合に備えるお金や日常生活費です。もしもの場合に備えて、生活費の6カ月〜1年分は確保しておきましょう。ご相談者さんの場合は、前述した通り、生活費の半年分以上は貯めていらっしゃるので既にここはクリアしています。半年分以上の貯蓄があれば、急な病気やケガで働けなくなったり、リストラや転職など人生の転機が起こったりしても、あわてなくてすみます。日々出入りするお金は出し入れしやすい普通預金口座で貯めておくとよいでしょう。

次は、マイホームの頭金や留学費用など、5年以内に使い道がある場合です。5年以内に使い道が決まっているお金は使うまでに時間はありますが、使う時に元本が割れていると困りますから普通預金よりも少し利回りがよく安全性が高い定期預金や国債などへ預けるとよいでしょう。ここに当てはまるイベントがあるかどうか考えてみましょう。

10年以上先の将来のためのお金は、使うまでに時間の余裕があるので、元本が割れる可能性はあるけれど、大きく増える可能性がある株式投資や投資信託などの投資商品に預けると良いでしょう。ここは、多くの方にとって老後資金が当てはまります。

目的別にお金を整理すると、いつまでにどれくらいの金額をどのような金融商品で準備すると良いのかがわかります。それによって、定期預金の比率を多くするのか、投資商品の比率を多くするのか、あるいは同じくらいなのか、判断しやすくなります。

ご相談者さんの場合、もし、5年以内に使い道が決まっているお金がないというのであれば、すでに生活費の半年分以上の預貯金があるため、10年以上先の使わないお金を貯めるために投資商品に力を入れても良いでしょう。

老後の年金作りはiDeCoを優先させる!

現在の積み立てとは別に個人年金保険への加入を検討しているようですね。個人年金保険は、老後の自分年金作りの手段として定番商品ですので、若い世代の方でも加入している人をちらほら見かけます。

個人年金保険は、毎月一定額の掛け金を支払い、保険会社は契約者が支払った保険料を契約時の予定利率で運用します。そして、「60歳や65歳などから10年間」という具合に、契約時に決めた受取開始年齢から一定期間年金を受け取ることができます。基本的に元本割れがなく、将来いくら受け取れるのかが確実にわかるので、安心感があります。

ただし、現在は、マイナス金利の影響で、個人年金保険の予定利率はかなりの低金利となっています。加えて、個人年金保険には、死亡保障がついているので、そのためのコストが保険料から差し引かれるので、実際の予定利率はさらに下がります。また、途中で解約すると、契約年数に応じて、解約返戻金が戻ってきますが、多くの場合、払込保険料の総額よりも下回ります。

そこで、個人年金保険に代わってオススメなのが「iDeCo(個人型確定拠出年金)」です。

iDeCoは、税制優遇を受けながら自分年金作りができる制度で、「掛金の拠出時」「運用中」「受け取り時」の3つの場面で税制優遇があります。iDeCoの掛け金は、全額を所得控除できます。掛金全額が所得控除にカウントされることにより、所得税を計算する元となる課税所得が減るので、所得税を減らすことができます。ちなみに、翌年支払う住民税も減らすことができます。また、iDeCoでは定期預金や投資信託などを積み立てていきますが、積み立て期間中は運用益は非課税になります。利益に対して非課税ということは、それだけ多くのお金を運用に回すことができるので、利息が利息を生む複利効果も期待できます。さらに、iDeCoは原則60歳から受け取りますが、受け取り時にも「退職所得控除」や「公的年金等控除」といった退職金や公的年金を受け取る時と同様の税制優遇が適用になり、お得に年金を受け取ることができます。

2年ほど前に「老後2000万円問題」が話題になりました。老後に衣食住の基本生活を送るためには、公的年金だけでは、2,000万円足りないとのことでした。ですから、iDeCoなどの税制優遇の恩恵を受けながら、大きく増やせる可能性がある制度でお金を増やしていかないと、老後の家計は苦しくなってしまうでしょう。

iDeCoには注意点も!

ただし、iDeCoは、不便な点もあります。それは、iDeCoで積み立てたお金は基本的に60歳まで引き出すことができないところや、会社員の場合、基本的に掛金の拠出額 が2万3,000円までという制限があるところ、また、家計の状況が変化して、積み立てをストップしたり、掛け金を変更したりする時に手続が面倒だったり、手数料がかかったりするところです。

その点、つみたてNISAは、iDeCoとは違い、いつでも自由に売買できます。加えて、家計の状況に応じて、簡単に積立をストップしたり、掛け金を変更したりすることもできます。

ですから、つみたてNISAとiDeCoを併用して活用することで、より効率的にお金を増やしていけるでしょう。今回のアドバイスを参考にしていただき、将来の目標や金融商品の特徴を把握して積立金額の内訳を検討してみてくださいね。

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