星野源の音楽ルーツ「ブルース・ブラザーズ」日本の劇場公開からちょうど40年! 1981年 3月28日 ジョン・ランディス監督の映画「ブルース・ブラザーズ」が日本で劇場公開された日

映画や音楽に大きな影響を与えた映画「ブルース・ブラザーズ」

劇中にも登場するブルース歌手ジョン・リー・フッカーに影響を受けてスタイリングしたという黒い帽子に黒のサングラス、黒ネクタイに黒スーツという、全身黒づくめスタイル。決して素顔を見せないが、ちょっと変わった踊りと辛辣なギャグ、妙な間で音楽を自由に操る人気者ブルース・ブラザーズ。

ブルース、ソウル、リズム&ブルースの名曲を歌い、忘れ去られていたブラックミュージックの楽しさを80年代初めに世界中に拡散。公開から40年の月日の間に、映画『ブルース・ブラザーズ』を観て感化され音楽を始めた若者を世界中で多発し続けているアイコン。

最近では星野源が『ブルース・ブラザーズ』を音楽ルーツのひとつであることを公言していることも記憶に新しい。さらに、『マトリックス』『メン・イン・ブラック』のスタイルは『ブルース・ブラザーズ』へのオマージュ』であることは映画ファンにも周知の事実だ。

伝説の傑作ミュージカル・コメディ・アクション、公開当時は批判された?

今でこそ伝説の傑作として語られるミュージカル・コメディ・アクション『ブルース・ブラザーズ』だが、40年前の公開時は一部の音楽評論家や演奏家からは、ブルースの魂を白人ハリウッドに売り渡す愚かな行為として批判されたことはあまり知られていない。

また、物語の舞台となったシカゴの地元警察の全面協力により58台のパトカーを廃車、ショッピングモールを丸ごとぶっ壊すカーチェイスシーンは金の無駄遣いと叩かれ、ネオナチ、市警察、カントリーバンド関係者まで敵にまわすストーリー展開はあまりにも軽薄すぎると批評されている。

しかし、公開まもなくしてそれらの批評は的外れであることは、実際に劇場に足を運んだ純粋な映画、音楽ファンの評価が覆していくことになる。 

ミュージカルを超えたミュージカル、極上の音楽が繋ぐ2時間13分の物語

刑務所から出たジェイク(ジョン・ベルーシ)を迎えに来たのは契りを交わした兄弟分エルウッド(ダン・エイクロイド)。そんなふたりが世話になった孤児院が財政難の窮地に陥った。彼らは孤児院を救おうと、かつての仲間を集め “ブルース・ブラザース・バンド” を再結成し、コンサート利益を孤児院に寄付しようとするが……。

たった3行でストーリーが語れてしまう映画を2時間13分で繋いだのは極上の音楽だった。時流のダンスミュージックやロックの源流ともいうべきブルース、ソウルへの深い敬愛の念が物語の節々まで散りばめられていて、どんな台詞や仕草も音楽の前にひれ伏せてしまう様はまさに愉快痛快。

ミュージカルを超えたミュージカル。本作ファンならば説明不要のドナルドダックダンシンヤ(ベース)の通称にニヤリのクレイジーケンバンド。そのフロントマン・横山剣の言葉を借りるならばアルバムや演奏よりも「楽曲が一番エラい!」のが『ブルース・ブラザーズ』だ。

逃避犯となったブルース・ブラザーズのふたりを追い詰めた警察(ジョン・キャンディら)やカントリーバンドの連中らがステージを見張るハイライト。「人は誰でも何をしていても結局は持ちつ持たれつ同じ人間さ。君も、俺も、彼らも、誰でも」(ダン・エイクロイド)とMCし「エヴリバディ・ニード・サムバディ」を歌い出す。熱狂する客席。耳を傾ける警察関係者。このハイライトシーンが純粋に胸を打つか、好きかどうかでこの映画への価値観も左右されるはずだ。

NBCの人気番組「サタデー・ナイト・ライブ」から人気が爆発

1977年からアメリカの3大ネットワークNBCの人気番組『サタデー・ナイト・ライブ』に登場したジョン・ベルーシ&ダン・エイクロイドのブルース・ブラザーズ。人気が爆発し番組から独立後、1978年6月にはミュージシャンとしてステージに登場。

この時の熱狂のライブを収録したファーストアルバム『ブルースは絆(Briefcase Full of Blues)』は、ビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街(52nd Street)』を蹴落とし1979年2月に全米チャートの首位に到達、ブルースアルバム史上最多となる250万枚のセールスを記録。その直後の映画だったことを考えるといかに本作がアメリカのエンタメ界で注目された1本であるか、容易に想像できるだろう。

ミュージックビデオしても楽しめる音楽シーン

さらに、圧倒的な存在感を放つジェームズ・ブラウンの「オールド・ランドマーク」。楽器屋の店長としてブルース・ブラザーズと共演するレイ・チャールズの「シェイク・ア・テイルフェザー」。レストランの仕切り女房役がハマっていたアレサ・フランクリンの「シンク」。シカゴ・ブルースの聖地マックスウェル・ストリートのストリート・ミュージシャンとして登場した先述のジョン・リー・フッカーの「ブーン・ブーン」。スキャット唱法の楽しさを魅せつけたキャブ・キャロウェイの「ミニー・ザ・ムーチャー」…… と音楽的な見せ場をあげればもう切りがない。ひとつひとつの登場シーンを切り取ればそのままミュージックビデオとしても楽しめる内容だ。ちなみに米MTV開局は映画公開から1年後のことだった。

久しぶりに『ブルース・ブラザーズ』を再生していたら、若い頃の視聴時には気が付かなかったカーチェイスのシーンが抜群に面白い。パトカーのクラッシュが何ともいえない抜群のリズムを刻んでいる。ジョン・ベルーシのアクロバットとダン・エイクロイドのクセのあるステップをパトカーが魅せている。見事なストリートミュージカル。心底、音を楽しむ、音楽映画『ブルース・ブラザーズ』。41年目のあらたな発見を探して「♪ Sometimes I Feel!」

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カタリベ: 安川達也

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