【マーティ&上坂すみれ 昭和・平成ソングって素敵じゃん】YMOの名曲「ライディーン」は今のアニソンに通じる

最後まで深く語り合った上坂(左)とマーティ

世界的に有名なギタリスト、マーティ・フリードマンと、ロシア語が堪能な声優・歌手、上坂すみれが懐かしい楽曲を語る連載の最終回。テーマは前回に続いてYMO。リアルタイムでYMOを経験していない2人は何を語る?

【YMO論2】

――前回、マーティさんが語ったDEVOは、YMOにも影響を与えました。アルバム「ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー」(1979年=左写真)に収録されたビートルズのカバー「デイ・トリッパー」は、DEVOがローリング・ストーンズの「サティスファクション」をカバーしたことに触発されレコーディングしたそうです。その「ソリッド――」の代表曲、「ライディーン」を聴いてみましょう

マーティ この曲も当時は相当未来的だったと思います。70年代はシンセサイザーは主流の楽器じゃなかったんですよ。ポピュラーミュージックで使うのは冒険的でリスキーでした。誰かのマネじゃないし、かっこいい曲です。

上坂 このドラムの音もだいぶ乾いてますね。

マーティ そうですね。アンチロックです。ロックのドラムは音が大きいけど、これはリバーブを絞ってかっこ良さゼロにしています。

上坂 なんでこういう乾いたドラムの音にしようと思ったのかとか、考えると面白いですね。

――上坂さんが生まれるずっと前の曲です。どう聞こえますか

上坂 初めて聴いた時、ゲーム音楽っぽいと思いました。それに味が濃いです。頭サビというか、開始すぐにテーマ的な濃いフレーズが出てくるじゃないですか。今のアニソンも頭サビがめちゃ多くて、通じるものがあります。

――続いて同じアルバムから「テクノポリス」です

マーティ これも当時にはかなり新しい音色です。これが出た時、日本ではどうやって聴かれたんですか? どうやって広まりましたか? テレビのBGM? ライブを見に行ったんですか?

――新しい音が日本でどう広まったかに着目したんですね。小学生だった私は口コミで知りました。テレビのBGMでも使われたようです

上坂 私は前向きで景気が良かったころの日本が詰まっているなと感じます。そのころの曲って、いま聴いても羽振りがいいんです。ノスタルジックであり、私の世代では再現できないから、うらやましくもあり…。

マーティ 上坂さんはどうやってYMOを知ったんですか?

上坂 私は筋肉少女帯や戸川純さん、P―MODELが好きで、そこからさかのぼって知りました。

マーティ 曲を聴いてどう思いましたか?

上坂 ゲーム音楽っぽさ、日本っぽいメロディーもあって、英語の歌詞も日本語の歌詞も、これ何語?みたいな歌詞もある。歌い方はビブラートとかなくてのっぺりしてると思いました。ドラムは打ち込みだと思ったら、ちゃんとドラマーの高橋幸宏さんがいてびっくりしました。私はアニソンとかゲームで打ち込みの曲には親しみがありましたが、人が演奏している、限りなく打ち込みに近い曲って、とてもかっこいいと思います。

――40年前のグループですが、後から聴いても発見があったんですね

上坂 ゲーム的世界観を感じて親しみやすかったですが、理解できないところもあります。でも一生理解できなそうな部分があるから、YMOに魅力を感じるんだと思います。

マーティ 素晴らしいです。自分の好みを言葉にできるのは大事です。ほとんどの人は好きな理由を説明できません。

上坂 YMOを好きな人は世代をまたいで多くいると思います。なぜ好きか、どこが好きかは皆さんちょっとずつ違うから、それを受け入れ合えるといいなと思います。

マーティ それも大事です。好みはパーソナルなもので、自分の好みも人の好みも全く同じ価値です。

――YMOは国境だけでなく、世代も超えて愛されるグループになってますね。深くていい話になったところで、この対談“散開”いたします

☆マーティ・フリードマン 米国・ワシントンDC出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍。04年から拠点を日本に移し幅広いジャンルで活躍している。「紅蓮華」などをカバーしたアルバム「TOKYO JUKEBOX3」が発売中。4月2日からツアー開催。名古屋、京都、福岡、大阪、東京で公演する。

☆うえさか・すみれ 1991年12月19日生まれ。神奈川県出身。上智大学外国語学部ロシア語学科卒。2012年に本格的に声優デビュー。13年にアニメ「波打際のむろみさん」の主題歌「七つの海よりキミの海」で歌手デビュー。ロシア、昭和歌謡、メタルロック、戦車、ロリータ、プロレス、ひげなど多方面の知識を持つ。最新アルバムは「NEO PROPAGANDA」(キングレコード)。

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