第2連隊「戦力化」完成 陸自水陸機動団発足3年 三つ目の配置行方が焦点に

日米共同統合演習に臨む水陸機動団隊員=昨年11月4日、鹿児島県十島村の臥蛇島(水陸機動団提供)

 離島防衛専門部隊の陸上自衛隊水陸機動団(本部・佐世保市大潟町)が発足して丸3年となった。本年度で主力部隊の一つ、第2水陸機動連隊の「戦力化」が完成。新型コロナウイルス禍でも米軍との共同演習を重ねた。今後、三つ目の連隊の配置の行方などが焦点となる。

■2年間訓練重ねる

 「(第2連隊が)水陸両用作戦を実行する必要な戦力はある」。同連隊長の武者(むしゃ)利勝1等陸佐はそう胸を張る。機動団は2018年3月27日、自衛隊初の水陸両用作戦部隊として約2100人で発足。離島を奪回するための主力部隊となる二つの機動連隊や、水陸両用車を操縦する戦闘上陸大隊などで構成する。

「水陸両用作戦を実行する必要な戦力はある」と語る第2水陸機動連隊長の武者1佐=佐世保市大潟町、陸自相浦駐屯地

 第1、2連隊はそれぞれ約600人。第1連隊は、旧西部方面普通科連隊を母体とし一足早く戦力を整えたが、第2連隊は2年かけて全国から隊員を集め訓練を重ねてきた。第2連隊の「戦力化」の完成を本年度の目標に据える中、新型コロナウイルスが流行。本部がある陸自相浦駐屯地でも今年2月に計4人が感染。コロナ対策と訓練の両立を迫られた。
 第2連隊は、北海道の北部方面隊実動演習や国内各地で実施された日米共同統合演習「キーン・ソード」に参加。2月には、大分県の陸自日出生台演習場で総仕上げに当たった。「(新型コロナの)支障はゼロではないが、われわれは与えられた環境で最大限のパフォーマンスをした。引き続き真摯(しんし)に取り組み、国民や地元の期待に応えたい」と武者1佐は語る。

■長崎県内3市が名乗り

 今後注目されるのが三つ目の連隊配備の行方だ。国は23年度までの「中期防衛力整備計画」に新編を明記しているが、どこに置くかは決まっていない。
 県や佐世保、大村、五島の3市のほか、北海道千歳市も誘致に名乗りを上げる中、陸自内で以前、機動団のいずれかの連隊を米海兵隊の新基地建設が進む沖縄県名護市辺野古に常駐させることを検討していた経緯が発覚。ただ、陸上幕僚監部は現時点で「配置は決まっていない。防衛省が検討中」とする。
 国際大教授(安全保障)で元陸将の山口昇氏は「機動力に富む部隊だが、沖縄に置くのも一つの選択肢。米海兵隊と日常的に訓練ができるため機動団にとって魅力的な場所だ」と指摘する。
 佐世保では、機動団の運用や訓練に向けて着々と準備も進む。九州防衛局は、陸自崎辺分屯地に水陸両用車の上陸訓練ができるスロープを新設する方針。分屯地に近接する崎辺東地区では、海上自衛隊の大型艦船の係留施設や補給倉庫などの整備が計画され、海自と機動団の連携が図られるとみられる。
 日本大教授(安全保障・危機管理)で元陸将補の吉富望氏は「(機動団の)実戦的な作戦能力を高めるためには、損害を最小限にする形での新たな上陸方法の創造や補給能力の向上が必要。訓練場所の確保などでは、自治体との連携も欠かせない」と話す。

■「米海兵隊のよう」

 機動団のモデルとなった米海兵隊は、今の機動団をどう評価しているのか。

第31海兵遠征部隊(MEU)のマイケル・ナカニージィー司令官(在沖縄米海兵隊提供)

 沖縄県に駐留する米海兵隊の部隊、第31海兵遠征部隊(MEU)のマイケル・ナカニージィー司令官は「これまでのパフォーマンスに感銘を受けている。粘り強さと規律正しさは、まさに米海兵隊のようだ」と評価。共同訓練の頻度の重要性に触れた上で「米軍の艦船から陸自のヘリコプターで陸地に部隊を輸送できるような、米軍と陸自の相互運用性も高めなければならない」との見解を示した。


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