春場所制し大関復帰確実の照ノ富士 〝相撲の神様〟も後押しで綱取りも視界良好

3度目の優勝となった照ノ富士(右)

すでに横綱級だ。大相撲春場所千秋楽(28日、東京・両国国技館)、関脇照ノ富士(29=伊勢ヶ浜)が大関貴景勝(24=常盤山)を押し出し、12勝3敗で4場所ぶり3度目の優勝を達成。大関復帰を確実にした。

両ヒザの故障や内臓疾患などで一時は大関から序二段まで転落。史上最大の復活劇は神様の〝ご利益〟も後押しした。その照ノ富士は、すでに現大関陣と比較しても頭一つ抜けた存在。早くも次の横綱の最有力候補と目されている。

3度目の優勝と大関復帰を決めた照ノ富士は「ホッとしている。応援がなかったら元の位置に戻ることができなかった。本当に皆さんのおかげ」と感謝の言葉を口にした。初優勝した2015年夏場所後、大関に昇進。しかし、両ヒザの故障や内臓疾患などで一時は序二段まで転落した。それでも、不屈の精神で逆境をはねのけ、昨年夏場所で幕尻優勝。復活ののろしを上げた。

大関復帰を次なる目標に定めた照ノ富士は、三役で3場所合計36勝を挙げ、昇進の目安となる33勝を軽々とクリア。31日に開かれる臨時理事会と夏場所の番付編成会議を経て、正式に大関復帰が決まる。現行制度となった1969年名古屋場所以降、平幕からの大関復帰は77年初場所後の魁傑以来2人目。十両以下からの復帰は初めてで、復帰を決めた場所での優勝も初の快挙だ。

2月11日には東京・富岡八幡宮で3年前に結婚したモンゴル出身のツェグメド・ドルジハンドさん(26)と挙式。「(春場所は)大事な場所。この結婚式を挙げて、いい成績で終わらせたい」と語っていた。師匠の伊勢ヶ浜親方(60=元横綱旭富士)も式を挙げた富岡八幡宮は江戸勧進相撲発祥の地として有名。同宮の関係者も今回の結果に「相撲の神様が見守ってくださったのでしょう」と〝ご利益〟を確信している。

富岡八幡宮の敷地内には歴代横綱の名が刻まれた「横綱力士碑」も存在する。照ノ富士の次の目標は、その碑に自身のしこ名を刻むことだ。本人も「一場所一場所、精一杯頑張れば次につながると思うので、一生懸命やるだけ」と頂点に意欲満々。しかも、神様がバックについているとなれば怖いものなどない。

実際、早くも次の横綱の大本命と目されている。今場所は横綱白鵬(36=宮城野)が右ヒザ手術のため途中休場し、鶴竜(35)が現役を引退。しかし、正代(29=時津風)、朝乃山(27=高砂)、貴景勝(24=常盤山)の3大関は優勝争いに絡めず、世代交代の期待を裏切った。逆転Vの可能性があった貴景勝にしても、成績上位力士が負けてチャンスを得たに過ぎない。

一方の照ノ富士は、その3大関をことごとく撃破。芝田山親方(58=元横綱大乃国)は「照ノ富士の取り口は、3人の大関より抜け出ている。体の大きさを生かした強引な取り口もあるけど、ここ一番で決めるところは決める。貴景勝は押し相撲だから別にしても、それが2人の大関にはない」。すでに格が違うと言わんばかりの口ぶりだった。

どん底から這い上がってきた男は、このまま一気に横綱まで駆け上がるのか。照ノ富士の奇跡の復活劇には、この先にもまだまだ続きがありそうだ。

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