北木島 ~ 石とともに生きる人々がつくった独特の景観が魅力!笠岡諸島最大の島

笠岡諸島最大の島、北木島。

かつて採石で栄え、明治神宮の橋や靖国神社の大鳥居にも北木島の石が使われました。

展望台から見る迫力のある石切り場は、北木島でしか見られない絶景です。

石切跡のある山肌が荒々しくも、島自体はのどかな雰囲気。独特の景色を眺めながら、のんびりと島時間を味わえます。

2020年12月には、大きな壁画も登場!

北木島の概要、代表的な見どころを紹介します。

笠岡諸島とは

笠岡諸島は、岡山県の南西端の笠岡市沖にある、大小31の島々です。そのうち有人島は、以下の7島。

  • 高島(たかしま)
  • 北木島(きたぎしま)
  • 大飛島(おおびしま)
  • 六島(むしま)

島々への橋はなく、笠岡市の港から船で行き来します。

のどかで落ち着いた雰囲気の島々です。

香川県の丸亀市・小豆島町・土庄町の島々とともに、「知ってる!? 悠久の時が流れる石の島 ~海を越え、日本の礎を築いた せとうち備讃諸島~」として日本遺産にも認定されています

北木島とは

K’s LABOにて撮影

北木島(きたぎしま)は、笠岡諸島最大の島です。

お笑い芸人「千鳥」の大悟さんの出身地としても知られています。

笠岡諸島のなかでは、もっとも人口の多い島です。

品質の良い石が採れるため、「石の島」として知られています。

高低差のある採石跡が迫力のある景観を作り出しているのです。

北木島の石については、のちほど詳しく紹介しますね。

北木島へのアクセス

北木島へのアクセスは、以下の4つのルートがあります。

くわしくは、笠岡市観光連盟のサイトを見てください。

北木島の石

北木島は、花崗岩(かこうがん)の産出と加工で栄えました

北木島で採れる石は日本有数の銘石と評されており、江戸時代から現代に至るまで、日本の歴史的建築・建造物に多く使われています。

北木島の石が使われているのは、たとえば以下の場所です。

  • 徳川幕府が再築した大坂城の石垣
  • 明治神宮

昭和40年代には石材加工場が約100か所もあり、かつては日本最大の石材産地でした。

一時は海外にも名を知られていたそうです。

2021年現在、島内の採石場は2か所に減少していますが、良質な花崗岩の「北木石(きたぎいし)」を産出しています。

採石場である「石切の渓谷(たに)」では、運が良ければ石工職人たちが働くようすを見られますよ。

島のいたるところに石があり、生活に根付いているようすが感じられます。

北木島の流し雛

流し雛(ながしびな)は、雛祭りのもとになったといわれる行事です。

「雛流し」ともいわれ、古くは『源氏物語』にも登場します。

家族の健康や安全を願い、木の葉などを人の形にした「形代(かたしろ)」に災厄を託して、川や海に流すのです。

北木島の流し雛は、江戸中期から続くとされ、笠岡市重要無形民俗文化財に登録されました。

旧暦3月3日の満潮時、帆を立てた小舟(うつろ舟)に紙雛を乗せて、海に流します。

行くときの注意点

北木島には港が4つあり、船によって到着港が異なります

島内の港と港を結ぶ公共交通機関はないので、行き先と到着する港を事前に確認しておきましょう。

観光の起点として便利なのが、複合施設「K’s LABO」です。

カフェで食事ができ、レンタサイクル・マリンレジャー用品の貸し出しも行なっています。

営業日は火・木・土・日・祝日に限られるので、利用したい場合は営業日に合わせましょう

石切の渓谷展望台の見学は、毎日正午~午後1時の1時間のみ

見学を希望する場合は、この時間に合わせて全体のスケジュールを組んでください。

レンタサイクルは、「K’s LABO」または金風呂丸フェリー内で借りることができます。

台数に限りがあるので、予約がおすすめです。

代表的なスポット・北木島でできること

北木島の代表的なスポットを紹介します。

K’s LABO

豊浦港そばの「K’s LABO」は、観光に便利な複合施設です。

「K’s LABO」には、以下のものがあります。

  • 石の歴史や文化を紹介するストーンミュージアム
  • 海を眺められるカフェ
  • 各種マリンレジャーレンタル

休んで、食べて、買って、遊んで。観光の起点になる場所といえるでしょう。

MAYA MAXXさんの倉庫壁画

2021年2月11日から14日、笠岡諸島を舞台とした芸術音楽祭、石の島かさおかプロジェクト 第0回「シマヲカナデル」の開催が予定されていました。

しかし、新型コロナウイルス感染症拡大防止のため、中継イベントに切り替えられることに。

本イベントは、2月13日午後1時からOHK岡山放送『なんしょん?』の特別版で、OHKスタジオと北木島会場を結ぶ中継イベントとして開催されました。

「シマヲカナデル」のプレイベントとして、画家・イラストレーター・絵本作家のMAYA MAXXさんが、倉庫壁画を制作

MAYA MAXXさんは、絵画・絵本・デザインなど、ジャンルを超えた多彩な活動で知られます。

毎年開催している個展の他、小説家 吉本ばななさんの書籍装丁画や、映画『ハチミツとクローバー』絵画指導などでも活躍しているかたです。

船からも見える、大きな青い鳥。

赤い円は、北木島の特産品である石を表現しています。

キラキラした優しい目をした大きな鳥が訪問者を出迎えてくれて、明るい気持ちになれるスポットです。

石切の渓谷(たに)

石切の渓谷(たに)は、日本屈指の歴史を誇る採石場です。

高低差の大きい採石場で、最大高低差は約180メートルだそう。

展望台では、高さ約60メートルの場所から渓谷を眺められます。

石切の渓谷展望台の見学は、毎日正午~午後1時の1時間のみ

迫力のある景色を楽しめます。

▼入場料は、以下のとおりです。

北木島でできること

季節によって、以下のようなことが楽しめます。

  • サイクリング
  • 山登り
  • SUP(サップ)
  • 牡蠣工場見学

のんびり歩くだけでも心地よい島です。

実際に北木島に行って歩いてみました

2020年の冬の日、北木島を歩きました。

写真多めでレポートします。

筆者は大福丸フェリーで向かいました。片道45分の船旅です。

フェリーの中には大漁旗。

近づいてきた北木島は、採石跡がしっかりと見え、石の島であることが感じられました。

荒々しくも、美しい山肌です。

港が近づくにつれ、MAYA MAXXさんの絵画が目に飛び込んできました。

遠くからランドマークを見つけたときって、わくわくしませんか?

船から厳島神社の鳥居が見えたときや、飛行機からエッフェル塔が見えたときのような、「来たんだな」という喜びを感じました。

到着後は、まず海を見ながらK’s LABOで一息。

石でできた恐竜のオブジェが出迎えてくれます。

コーヒーを飲んで、お土産をチェックしました。

そして、島を散策!

早速出会った青い壁の建物がレトロです。

ここは豊浦公会堂。夏目雅子さん主演 映画『瀬戸内少年野球団』のロケにも使われた歴史ある建物です。

旧豊浦幼稚園跡には、かわいい絵がいくつも残っていました。

現在は、NPO法人かさおか島づくり海社の事務局として利用されています。

彫刻家・牛尾啓三(うしお けいぞう)さんの作品『メビウスの輪』。

どうやって作っているのだろう?と不思議に感じる作品です。

島にくらす猫とも出会いました。

透き通る海と、石。

瀬戸内海の景色を見ながら、のんびり歩きます。

海風が心地よくて、視界が広く開放的。

ところどころに石のオブジェがあったり、石が積んであったりしました。

北木のベニス」と呼ばれる船着き場では、石塀とボートがよい雰囲気。

イタリアのベニスもこんな雰囲気なのでしょうか。

車道から少し内側に入った位置にあるので、見逃さないように気をつけてくださいね。

石切の渓谷展望台へ。

筆者は営業時間外に訪れたので、展望台には登れませんでした。

しかし、下からショベルカー越しに一部を見るだけでも迫力!

高いところから見る景色はきっと美しいことでしょう。

訪問者の感想を見ると、「絶景に感動した」「足場が揺れるので怖い」という意見がありました。

「次回はぜったい営業時間(正午~午後1時)に訪れよう!」と決心。

島の各所に柑橘や木の実がなっていて、のどかな自然の恵みを感じられます。

どんぐりを拾ったり、植物の色にみとれたり。

道を教えてくれた島のかたは、自宅の木から小さな実をちぎってパクっと食べていて、自然が近くにあるのだなあと感じました。

のんびりと歩きながら、K’s LABOに戻ります。

島のかたにおすすめしていただいた「鯛骨ラーメン」をいただきました。

歩き疲れた身体にラーメンが沁みます。

帰りの船から見る夕空も、乙なものでした。

広い空、近くに感じる海、刻々と変わる風景。

移動時間も島旅の醍醐味で、好きな時間です。

北木島には、笠岡諸島全体の自立的発展、島民の生活安定と福祉向上を目的にサービスを提供している、NPO法人があります。

NPO法人かさおか島づくり海社 理事長の鳴本浩二(なるもと こうじ)さんに、話を聞きました。

島の人に話を聞きました

北木島には、笠岡諸島全体の自立的発展、島民の生活安定と福祉向上を目的にサービスを提供している、NPO法人があります。

NPO法人かさおか島づくり海社 理事長の鳴本浩二(なるもと こうじ)さんに、話を聞きました。

──鳴本さんの考える北木島の魅力はどんなところですか?

鳴本(敬称略)──

外から見た魅力は、実はあまりわかりません。

しかし、生活するなかでの魅力を感じています。

地域には、青年団活動がありました。

青年団は、地域コミュニティをつかさどるところですね。

北木島には3つの青年団がありました。

ぼくが青年団に入ったころは、小さな集落に43人ほどの青年団員がいて、半分以上が女性でした。

地域の困りごとや年中行事や文化芸能を仕切っていて。

何でも活動ができたので、そういう地域の活動に魅力を感じていました

先人たちがいろいろなことをしながら、地域を守って育ててきた。

自分も島でなにかしたい、できることをがんばってやりたいな、と思っていました。

現在は、夜に食事を持ち寄って集まり、「どこの家の人が困っているから助けよう」とか、そんな地域の話をしています。

──笠岡諸島が日本遺産に認定されましたね。

鳴本──

観光は一朝一夕でうまくいくものではありません。

島民は、雇用が生まれるもの・少しでもお金になるものを作りたいと考えています。

訪れた人も島の人も喜ぶような、観光のありかたを考えなければいけません。

──観光客はあまり知らない、おすすめのスポットってありますか?

鳴本──

ないかなあ……。いえ、本当はあると思うんです。

でも、生活のなかに入ってしまっているから、観光スポットだとは感じないんですよ。

北木島だけでなくて、どこの島もですが。

以前、島外のかたが撮った写真を見せて「ここはどこでしょう?」と島の人に聞いたことがあるんです。

意外とどこかわからないんですよね、いつも見ている景色でも目線が違います。

なにも情報をインプットせずに島を歩いたほうが、いいところが見つかるんじゃないでしょうか。

「観光スポットを見に行こうとする」ではなくて、好きなところを探してほしいですね。

──逆に、観光客にしてほしくないことはありますか?

鳴本──

ぼくが思うには、あまりないんじゃないでしょうか。島の人は純粋で優しい人たちなんです。

「ズカズカ入ってくる」ようなことがなければ、「こんにちは」といったあいさつだけでも喜びます。

──鳴本さんが島のために活動している原動力って、なんですか?

鳴本──

落ち着くのかな、ぼく自身が。

本業は石材業なんです。

出張に行くと「早く帰りたいなあ」と思っていたし、島に戻って来ると落ち着いていました。

NPO法人かさおか島づくり海社の理念のひとつに、「島で生まれて島で育った人たちが、1日でも長く島に住み続けられるような環境をつくりたい」というものがあります。

笠岡諸島の有人島は7島ありますが、ひとつになって考えて、住み続けられる環境づくりに向かって活動しています。

活動を初めて25年以上になりますが、「もうやめよう」とひるんだことは1度もありません

家族に「もうやめなさい」って怒られたことは、何度もありますけどね(笑)

おわりに

北木島は、採石跡が独特の景観を作っている穏やかな島です。

のんびり歩いていると、周囲の草花が目を楽しませてくれます。

観光客の多い島ではありませんが、レンタサイクルも飲食店もあるので、比較的観光しやすいのではないでしょうか。

海水浴場もありますし、マリンレジャーや釣りなども楽しめます。

食事できる場所もあって、歩きやすい島でした。

筆者は取材も兼ねて訪れたので、インタビューやイベントへの参加があり、一部しか巡っていません。

しかし、ふつうに旅をするならば、日帰りでもレンタサイクルを使って島の南のほうへ行けます。

また訪れて、島の南のほうも歩いてみたいです!

© 一般社団法人はれとこ