【大阪杯】コントレイル 不安も疑問も一掃する福永祐一の名解説

厩舎を出発するコントレイル

現役最多のJRA・GⅠ4勝馬対決が注目を集める第65回大阪杯(4月4日=阪神芝内2000メートル)。「距離の壁」という明白な課題があるグランアレグリアに対して、昨年の牡馬3冠馬コントレイルの不安要素とは!? 自虐キャラ&心配症のコントレイル番・石川吉行記者は次から次へと疑念が頭をもたげるが…。主戦の福永祐一(44)はうっとうしいオッサンを黙らせる名解説で堂々、2021年全勝宣言をしてみせた。

いよいよコントレイルがターフへと帰ってくる。昨年は史上3頭目となる無敗での牡馬クラシック3冠制覇の偉業を達成。さらにはアーモンドアイに挑戦したジャパンCでは最強馬の前に初めての黒星を喫したものの、その堂々たるレースぶりには勝者にも劣らないほどの賛辞が贈られ、無観客開催を強いられたコロナの年の競馬界を大いに盛り上げ、多くの人々を勇気づけた。

しかし、菊花賞での激闘からのタイトなローテーションは3歳馬にとって大きな試練であったことは想像に難くない。勇気をもったチャレンジの代償が、コントレイルの行く末に影を落とすものになりはしないか? 同じくジャパンCに挑んだ3冠牝馬デアリングタクトが今年始動の金鯱賞で2着に敗れるシーンを見て、老婆心とは知りつつも、そんな懸念が頭をかすめた。

3月6日に大山ヒルズから栗東トレセンへと帰厩。今回は時間をかけてしっかりと休養を取り、激戦の疲れを癒やしてからの立ち上げとはいえ、帰厩時の馬体重が490キロ(JCは456キロ)まで増えているとなれば、並の馬なら重め残りが心配されるところだが…。追い切りでの動きを目の当たりにして、その不安は一掃された。

福永が騎乗した2週前追い切りは坂路併せ馬で4ハロン50・1―12・6秒をマーク。引き続き福永が手綱を取った1週前のウッド併せ馬では6ハロン78・6―12・0秒の時計で併走相手を並ぶ間もなく置き去りにしてしまった。時計の出方だけをみれば、重め残りどころか、昨年以上に派手に動けている。やはり3冠馬はモノが違うということか。

その一方で昨年も前進気勢は強めで、調教でもやればいくらでも速い時計は出ていたであろうところを抑えめにしていたのに、なぜ今回はこれほど攻めた調教を行う必要があるのか? 新たな疑問が生まれてきたのだが、福永はこれについて明快な回答をくれた。

「去年は菊花賞、ジャパンCと長距離のカテゴリーに入るレースを使っていたけど、今回の2000メートルに関してはよりスピードを求められる条件。坂路では速い時計を出しにいく調整をして、翌週のウッドでは時計が速いなかでも、脚をためて走ることができるか確認をしておきたかった。心臓をつくるという意味でもしっかりと負荷をかけることができたし、いい追い切りだったと思う」

速い時計を出した追い切りの意図を細やかに解説。それは同時に今年始動戦から能力全開でいく宣言にも聞こえる。

「今から何かを劇的に変える必要はない。ただ、ジャパンCの時と大きく違うのは精神面だと思う。(ローテが詰まっていたことで)肉体的には走れる体であっても、精神的に追い詰められた状態にあったのは当日の雰囲気やゲート内でも感じたし、馬は苦しかったんだと思う。その点、今回は落ち着きが出て、精神的にも肉体的にもいい状態にある。あとは無事にレースまでの時間を過ごせれば…。今年は出るレースを全部勝つという意気込みで臨みたいからね」

走りのバランスなどの修正点を陣営と確認しながら調整を行っていた昨春、3冠達成を前に緊張感のみなぎっていた昨秋に比べて、至極自然体であり、それが自信の表れのようにも映った。

一度敗れたという経験さえも、勝たなきゃいけない立場からの解放という力に変えている。もはやコントレイルが彼らしい走りさえすれば、おのずと結果はついてくるのではないか。グランアレグリアとの“最強馬決定戦”がコントレイルの新たな歴史の始まりとなるに違いない。

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