「雇用継続を」期待の声 人口流出など不安も 三菱香焼工場売却

 「今まで通りやれるのか」「人も仕事も動くきっかけに」-。三菱重工業が長崎造船所香焼工場(長崎市)の新造船エリアを大島造船所(西海市)に売却する契約を締結した30日、関係者からは雇用への不安や活性化への期待などさまざまな声が上がった。
 香焼工場内で造船に従事してきた人たちの思いは複雑だ。協力会社、合同会社福田の福田令玉社長(51)は「残念。大島も今までの協力会社をなるべく雇ってくれたらいいが」と不安を口にする。「人口流出につながらないよう、長崎のため、地元の雇用のために大島はやってほしい」と求めた。
 別の協力会社の社長は「大島の下での操業はまだ先になる。こちらも食べていかないといけないし、船に執着していられない」と修繕業務を担いつつ造船から検査事業へシフトしている。「三菱の下請けの方が単価は高い。大島との付き合い方は業者によって分かれるだろう」とみる。
 同工場と共に発展してきた地元香焼の住民には寂しさと願いが入り交じる。香焼町連合自治会の浜崎孝教会長(82)は「三菱の規模が縮小するのはやはり寂しい。三菱の社員からは今朝、異動で工場を離れるという連絡もきた。大島の社員が来ても、いい関係を築きたい」。60代男性は「大島がどんな事業をするか分からないが、今以上に人も仕事も動いてくれることを期待したい」と語った。
 田上富久市長は「引き続き香焼工場が活用されることに安堵(あんど)している。今後も市の基幹産業である造船造機製造業の発展に向けて市の役割を担っていく」とコメント。長崎商工会議所の宮脇雅俊会頭は「大島造船所のさらなる受注拡大と三菱重工長崎造船所によるクルーズ船メンテナンス事業の早期事業化など、今後の展開に期待する」とした。


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