最大級台風での高潮、相模灘沿岸13市町浸水 神奈川県試算 小田原、茅ケ崎、藤沢市など計17平方キロにも

「超大型」の台風で高潮の被害に見舞われた横須賀市の久里浜港付近。海水が引いた後、道路などに大量の砂が残された=2017年10月(住民提供)

 相模灘沿岸部に来襲する最大級の台風で高潮が発生した場合、三浦市から湯河原町にかけての全13市町で計約17平方キロが浸水するとの試算結果が30日、県から公表された。全体の3分の1に当たる約6平方キロを小田原市が占めたほか、川沿いのエリアは内陸にも影響が及ぶとされた。県は水防法に基づく高潮浸水想定区域を5月末までに指定し、詳細な区域図を公表。沿岸市町と協力して住民らの避難対策に取り組む方針だ。

 高潮の想定条件は、上陸時の中心気圧が最も低かった1934年の室戸台風級(910ヘクトパスカル)が相模湾に来襲した場合。発生確率は千~5千年に1回で、最悪のケースという。

 高波も含めて沿岸部の影響が大きくなる台風の進路を五つ選び、通過時の速度(時速20~73キロ)や上陸地点を変えながら、潮位や波高が最大となる25パターンを重ね合わせた。

 その結果、1センチ以上の浸水が見込まれる範囲は小田原市が約6平方キロと市町別で最大となり、茅ケ崎市が約3.5平方キロ、藤沢市の約2平方キロと続いた。浸水時の水位が最も高いのは小田原市と大磯町で、それぞれ5メートル近くに達する地点があるという。

 県によると、小田原市の影響が大きいのは、相模トラフの急峻(きゅうしゅん)な海底谷が沿岸部に迫っているため、波高が高くなることが原因。小田原駅周辺や酒匂川沿いの浸水エリアが広く、JR国府津駅付近では東海道新幹線の線路周辺に浸水が及ぶことが分かった。

 このほか、相模川とその支流、境川などの川沿いでも内陸まで浸水すると想定された。台風接近時は雨量がかさむため、高潮と同時に河川が増水する影響も加味したが、地球温暖化による海面上昇は試算に反映させるのが難しいため、考慮していない。

◆高潮 台風や発達した低気圧が通過する際、海水面が上昇する現象。気圧の低下による「吸い上げ」と沖から海岸に向かって吹く強風による「吹き寄せ」で潮位が高まる。気圧が1ヘクトパスカル低下すると、海面は1センチほど上昇する。満潮と重なるとさらに上がり、災害の恐れが高まる。高潮による被害では、5千人以上が犠牲になった1959年の伊勢湾台風が知られるほか、2018年の台風21号では関西国際空港が浸水した。

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