2014年第6戦鈴鹿1000kmで繰り広げられた“120周におよぶバトル”【スーパーGT名レース集】

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 日本でもっとも高い動員数を誇るスーパーGT。2019年にはDTMドイツ・ツーリングカー選手権との特別交流戦が行われ、2020年からはGT500クラスにDTMとの共通車両規則『Class1(クラス1)』が導入され、日本のみならず世界中でその人気は高まっている。そんなスーパーGTの全レースから選んだautosport web的ベストレースを不定期で紹介していく。

 連載8回目は2014年シーズンの第6戦『第43回 インターナショナル 鈴鹿1000km』。GT300クラスの強豪チームと新興チームが、120周にわたってバトルを繰り広げた一戦だ。

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「10周にわたって繰り広げられたドッグファイト」

「歴史に残る20周超の死闘」

 そんなセリフを聞くと、さぞかしすごいレースだったんだろうと誰もが思う。では、「120周におよぶバトル」と聞いたらどうだろうか。にわかには信じ難いが、スーパーGTはそんな大事件がたまに起こる。

 2014年第6戦鈴鹿1000kmのGT300クラスで、そのまさかのバトルが展開された。TWS LM corsa BMW Z4とARTA CR-Zとの間で起きた、間違いなくGT史上最長時間かつ最長距離の戦いであり、しかもトップ争いであった。

 決勝でステアリングを握ったのは、TWSは飯田章と吉本大樹、ARTAは高木真一と小林崇志だ(TWSは第3ドライバーに佐藤晋也が登録されていたが、決勝はドライブはせず)。4人はそれぞれ何度ドライバー交代しても、コース上で対峙するのは、やっぱり同じ相手だった。

 予選ポールポジションはARTAが獲得した。小林が自らQ2アタックを申し出て、2番手以下に0.5秒以上の差をつけて決めた。一方、TWSは6番手と、搭載ウエイトのわりには平凡な順位だった(ARTAが50kgに対して、TWSは22kg)。

 決勝序盤は、ARTAのスタートを担当した小林が飛ばし、後続に16秒ものマージンを稼ぐことに成功する。TWSは吉本がスタートを担当。こちらもハイペースで走行し、28周目に2番手まで浮上した。その瞬間、2台によるバトルの火蓋が切られることになる。

スタートはARTA CR-Zの小林崇志がリード。後続に16秒ものマージンを稼ぐことに成功する

 吉本が2番手に浮上した時点でARTA小林との差は約19秒。それが第2スティントに入ると、飯田に交代したTWSがさらに追い上げ、60周目にARTA高木の背後に迫る。そして62周目に飯田は高木をオーバーテイクすることに成功する。

 ところがTWSはその後のピット作業でロスし、ARTAに先行を許してしまう。しかし、第4スティントの98周目に、飯田が高木を再び捉えてトップに浮上する。

 すると今度は第5スティントのアウトラップを走る吉本を、小林が抜き返す。その後タイヤが温まった吉本は、逆に小林に何度も仕掛け、133周目についにトップを奪い返すことに成功する。

 2台の間隔はその後5秒以上離れたが、144周目には再び1秒以内に接近。まだクライマックスが先にあるのかと思われた矢先、147周目にARTAが突然スローダウン。油圧低下のトラブルでマシンを止めることになった。

 トラブル発生時にステアリングを握っていた小林は、悔し涙にくれるが、もしそれがなくても「TWSが勝っていた」というのは両チームの見解だ。それだけ決勝中のペースは良かったのである。

ARTA CR-Z(高木真一/小林崇志)

「ARTAはスティント前半と終盤でタイムを落としているのが分かっていた」と飯田。予選一発で負けていても、決勝ラップのアベレージで優っていれば勝負になる。ただ、チームはこの年初参戦ゆえ経験不足からくるピット作業のロスが多く、それはコース上で取り返さなければならなかった。

 ARTAは予選一撃は速いが、決勝アベレージは厳しい。この年1勝を記録しており、チームの総合力は高いが、トラブルが発生したのはこちら。TWSは予選は平凡だが決勝に強い一方で、ピット作業はまだまだ洗練されていないが、トラブルは出なかった。

 ARTAはJAF-GT規定のマシンで、エンジンをミッドシップに搭載し、タイヤはブリヂストン を履く。TWSはFIA-GT3車両でフロントにエンジンを積み、ヨコハマタイヤを履く。生まれも育ちも仕組みも特性も違うマシンを、強豪チームと新興チームが走らせる。それでも120周もの間、何度も順位を入れ替えるバトルが展開された。

 鈴鹿の1周の距離は5.807kmで、その120ラップ分だから、トータル696.84kmも延々とやり合っていたことになる。単純計算で、4時間強。その間、ずっと付いたり離れたり、抜いたり抜かれたりを繰り返していたのだ。その間、常に集中しているドライバーのタフネスぶりには恐れ入るが、スタンドで応援するほうもお腹いっぱいだったことだろう。

TWS LM corsa BMW Z4(飯田章/吉本大樹/佐藤晋也)
第43回 インターナショナル 鈴鹿1000kmチェッカー後の花火