「シグナル」脚本家が一番伝えたかったメッセージとは?

4月2日より、『劇場版シグナル 長期未解決事件捜査班』が公開される。 2016年に韓国のtvNで放送され、数々の賞を受賞したドラマ「シグナル」。日本では2018年にリメイク版が放送され、今回待望の映画化となった。

前回の記事では「シグナル」が韓国でどのようにして生まれたのか?を脚本家キム・ウニ氏のインタビューを通して振り返ったが、後編では「シグナル」で一番伝えたかったメ ッセージを聞いてみた。


**― チョ・ジヌンさん演じるイ・ジェハンのパートでは、一つの事件が終わる毎に、年数が飛んでいきます。年数を重ねるごとに、ジェハンは刑事としての貫録が増し、どんどん魅力的な男性になっていきます。10年以上の時の経過を歩む彼を描かれる上で、どんなことに苦労されましたか?
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イ・ジェハンは過去で、パク・ヘヨンは現実で、成長していくキャラクターです。貫禄がついたというよりは、色んな事件を経験したことで残された遺族の痛みを理解することができる、そして、どんな事件も絶対解決しなくてはならないと強い使命を感じるようになるキャラクターだと言えます。そんな刑事としてのイ・ジェハン、パク・ヘヨンだからこそ、カッコよく魅力的に見えたのではないかと思います。

10年間にわたり時間の流れを見せないといけないという難しさは、脚本より実際映像にしないといけない現場のほうがもっと悩ましかったのではと思います。若い頃の感じと、歳をとってからのイ・ジェハンの違いを作らないといけなかったので。それをよく表現してくれた俳優、現場スタッフ、監督に感謝しています。

**― キム・ウォンソク演出家とのお仕事は今回が初めてだと思います。キム・ウニさんの作品は緻密な構成で、またキム・ウォンソク監督も非常にディテールにこだわられる方だと思います。お仕事をされてみて、ウォンソク監督の印象はいかがですか?
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監督は本当純粋な方です。お仕事しか分からない方で、好き嫌いに対しての感情が顔にでる人です。私とはそう言った所がよく合う人で、一緒に仕事しながらコミュニケーションも良くできました。今後も一緒にお仕事出来たら光栄だなと思っております

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― キム・ウニさんの思い入れのあるセリフ・シーンがあれば、その理由と合わせてお聞きしたいです。

過去と現在の刑事たちが無線で話す構成を考えた時から、"そこ(未来)も同じですか?20年もたてば少しは変わりましたよね?そうでしょう?"と言うセリフを絶対に入れたいと思いました。

我々が住む社会が物質的には発展しているが、別の部分も一緒に発展しているか?というと、そうではないと思っていたので。

― 劇中で描かれる人間模様に多くの視聴者が感動しましたが、キム・ウニさんがこの作品で視聴者に一番伝えたかったメ ッセージは何ですか?

韓国では、まだ多くの国民たちに精神的なトラウマとして残っている大きな未解決事件があります。法的な解決だけではなく、真の意味での慰めがあって、責任を取るべき者が責任をとれば、このような事件が再び起こらないのだろうと思っています。

未解決事件が起きないよう、社会と社会の構成員である我々が、引き続き関心を持てたら良いなというメッセージを送りたいと思いました。

― 多方面から絶賛を受ける本作ですが、キム・ウニさんが手掛けれられた作品の中で「シグナル」はどのような存在ですか?

ジャンル物はまだ韓国ではマイナーに近いんです。高い製作費に対して大きな収益は期待できないし、視聴率も保証が難しい。ですが、「シグナル」のおかげで次の作品を作る時、私が作りたいものをもっと自由に書けるようになりました。私にとってはありがたい作品です。

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