琵琶湖漁師「年収1千万円」計画 IT駆使、湖魚の市場開拓 滋賀県が予算

滋賀県が漁業者と行っている就業希望者向けの漁業体験研修。2021年度からはこうした研修も漁協の枠を超えて広く行う(2010年、大津市本堅田2丁目・堅田漁港)

 漁業者を少数精鋭にし、10年後に年収を1千万円にする―。滋賀県は、後継者不足や需要減少に悩む琵琶湖漁業の存続に向け、夢のある旗印を掲げた業界改革に、県漁業協同組合連合会(県漁連)と着手する。IT(情報技術)を駆使したり、湖魚の新たな市場を開拓したりする事業費3100万円を2021年度当初予算に計上した。

 県などによると、琵琶湖の漁業者は1970年代に約3800人いたが、最新の統計の2018年には836人まで減少、65歳以上が6割を超えるなど高齢化が進む。漁獲量も70年代の5千~6千トンから約800トンに減った。漁業者の年収は100万~300万円にとどまり、後継者育成が長年の課題となっている。

 昨年からは新型コロナウイルス禍で状況はさらに悪化。京都、大阪の料亭からの注文が激減し、アユの価格が約3割下落したほか、ビワマスも1キロ約2千円から500円ほどに落ち込み、危機的状況という。

 県は業界の苦境を受け、「少人数でももうかる漁業」を合言葉に県漁連を支援する形で琵琶湖漁業の改革に着手。「取り組む旗印」として将来年収を1千万円と大胆に定めた。

 将来の理想としては漁業者が個々に漁獲している現状を徐々に改め、スマートフォンなどで情報共有し、高値の時に多く、安値の時には少なくといった形で、価格や需要に応じて漁獲量を変える「スマート水産業」を目指す。21年度は基礎作りの年度と位置付け、アユなどの漁獲量を毎日共有するアプリを開発する。料亭以外の飲食店や首都圏といった新たな市場を開拓するための調査も行い、これまで先輩漁業者と新規就業者の間で徒弟制度的に行ってきた若手育成策も漁協の枠を超えてより広範に行う。

 県は25年時点の目標を漁業者160人、漁獲量900トンと定め、少数精鋭で漁業を継続する目標を立てる。水産課は「ニーズを意識して琵琶湖の水産資源を最大限に活用し、魅力ある漁業に転換していきたい」としている。

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