【MLB】指揮官が課す“並行カウント”からの攻め 菊池雄星が89球で見せた真価の兆し

マリナーズ・菊池雄星【写真:AP】

サービス監督が求めた姿勢「1-1の並行カウントから…」

■ジャイアンツ 6ー3 マリナーズ(日本時間3日・シアトル)

マリナーズの菊池雄星投手が2日(日本時間3日)のジャイアンツ戦で今季初先発。最速97マイル(約156キロ)の直球にカッター、スライダー、カーブ、スプリットを交え、2019年5月3日以来となる自己最多タイの10三振を奪う力投を見せたものの、6回に同点2ランを浴び勝敗は付かなかった。好投を演じたメジャー3年目のスタートを「ストライク先行で内容には充実感があります。(次回も)今日のような形でいければいい」と菊池は自己評価した。【木崎英夫】

ストライク先行――。

サービス監督が試合前の会見で語気を強めた言葉だ。過去2年、菊池に求め続けてきたその思いを指揮官はこう説き述べている。

「1-1の並行カウントからストライクゾーンを突く積極果敢な投球ができるかどうか。その意識を貫くにはヒットも一発も食らうだろう。でも、今夜はユウセイが相手を“守りの攻撃”にさせられるかどうか、それを見極める試合だ。往々にして力投型の投手はエンジンがかかるのが遅い。ブルペンから気持ちを起こして臨戦態勢を作り、立ち上がりから自分のリズムで入っていくこと。その気持ちで6回まで行ってもらいたい」

打者に圧を掛け続けるというメッセージを“並行カウント”に込めたサービス監督の期待に、菊池は数字で応えた。打者25人のうち並行カウントになった4人をすべて打ち取り、ボールが先行した不利なカウントから対した3人ではヒット1本に留めた。

「立ち上がりから自分のボールが投げられていた。あまり厳しいコースを気にせずに真ん中周辺を目がけて、(ホームベースの)前後左右にボールが散ってもそれでいいんじゃないかなっていうぐらいの気持ちでいきました」

6回3失点の手応え「こういう形でいくんだっていうところは出せた」

6回、4番のロンゴリアに浴びた右翼への同点2ランは、前日に同僚投手が喫したのと同じ外角の直球。相手のホットゾーンをかわしきれなかった制球の甘さはあったが、菊池は痛恨の1球にも「全力で腕を振って勝負にいった結果」と納得した。

6回6安打3失点1四球10奪三振。結果だけを見れば「及第点」が付く今季の初登板で、菊池は、捕手からの返球をグラブに収めると左足をプレートに掛ける間を詰めて、臨戦態勢への意識を足元から保ちリズムを作っていった。

終始硬い表情で話した試合後の会見で、菊池は表情を和らげて言った。

「初戦で自分の今シーズンの形というか、こういう形でいくんだっていうところは出せたと思います。まだ改善点はありますが、逆にそこは自分自身が楽しみにしてこれから臨みたいと思います」

一夜明けた3日(同4日)、サービス監督は「マウンドでの落ち着きはここまで取り組んできたことの自信の表れ。6日後の登板が楽しみ」とうなずいた。

“攻めの投球”と“守りの打撃”――指揮官が定義する「ストライク先行」を89球でたどった菊池雄星が、真価を問われるメジャー3年目に好スタートを切ったのは確かなこと。(木崎英夫 / Hideo Kizaki)

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