投薬ミスで意識低下、睡眠状態に 横浜の病院を認知症患者が提訴へ

保土ケ谷病院=横浜市旭区

 横浜市旭区の保土ケ谷病院で2019年11月、入院中の男性(76)が多量の抗精神病薬と睡眠薬を誤投与され、一昼夜にわたり意識低下の睡眠状態に陥っていたことが4日、分かった。男性は睡眠中に誤嚥(ごえん)性肺炎を発症したが、病院側は誤投薬との因果関係を否定。男性は病院を運営する医療法人芳生(ほうせい)会に損害賠償を求め、今夏にも横浜地裁に提訴する方針だ。

 男性は16年4月から、認知症で精神科に入院。男性側によると19年11月26日午後8時半ごろ、統合失調症の患者に処方されていた5種類の錠剤6錠を看護師から誤って投与された。睡眠薬のほか認知症患者に使用が推奨されていない2種類の抗精神病薬が含まれており、男性は意識が低下、約27時間後の28日未明まで眠り続けた。

 病院は男性の代理人弁護士に宛てた書面で「誤薬をしたことは事実」と認めた上で、男性と家族に謝罪した。代理人によると、患者2人の姓が類似し、看護師の見間違いによる「単純ミス」が原因と説明している。

 一方、男性が睡眠中に発症した誤嚥性肺炎について、病院は加齢による飲み込む機能の衰えや気管支炎の既往歴などが原因と主張。事故直後は家族に「誤薬による意識低下による肺炎」と説明していたが、「誤薬によるものと断定するには至っていない」と一転し、賠償責任を否定している。

 男性側は、睡眠中の経過観察が不十分だったと指摘。病院は看護師の巡回は適正だったと反論しているが、看護記録には残されていない。ベッドに寝たまま肺炎治療を余儀なくされ、筋力の低下で歩行が困難になったとの主張についても争っている。

 神奈川新聞は院長に書面で質問したが、期限とした3月末までに回答はなかった。病院は「裁判所が介入しているので、回答は控える」としている。

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