「その時のことが頭を…」DeNA三浦監督に初勝利を贈った高卒4年目右腕が涙した理由

DeNA・阪口皓亮【写真:荒川祐史】

阪口は開幕3カード目で初先発、5回3安打無失点でプロ初勝利

■DeNA 3ー1 広島(4日・横浜)

DeNAの三浦大輔新監督が就任9試合目で初勝利。勝利投手となったのは、プロ4年目で初勝利をマークした阪口皓亮投手だった。

阪口は5イニングを投げて被安打3、与四球3、奪三振も3で広島打線を無失点に抑えた。初回は2死から西川、鈴木誠に連打を浴びて二、三塁のピンチを作ったが、前の2試合で6打数4安打、4打点と当たっていた松山を三振。勝利投手の権利がかかった5回も2死走者なしから四球と安打で一、三塁とされたが、好調な西川を二ゴロに打ち取ってガッツポーズを見せた。

「試合前は心臓が飛び出るぐらい緊張していた」という阪口は、「自分自身が勝てていなかったのと、チームにまだ勝ちがない状況でもあったので、どこかで流れを変えないといけないという気持ちがあった。試合中は投げることに集中していてそれどころではなかったが、身体的に心拍数が上がっているのも感じたので、普通ではなかったと思う」と胸中を明かした。

5回のピンチには、まず木塚コーチがマウンドに向かい、その後もう1度、野手が集まり、プロ初勝利のかかった右腕に声をかけた。阪口は「自分自身がいっぱいいっぱいになっていて、正直、何も耳に入ってこなかった感じだったが、間を取ってもらったことで落ち着いたかなと思う」と振り返り、「心強い先輩たちが後ろを守ってくれて、1人ではないと感じることができた。野手の皆さんの力を借りて抑えることができた」と感謝した。

9回に一打同点のピンチがあったが、クローザーの三嶋がしのいで阪口のプロ初勝利が決まった。チームも今季初勝利となり、阪口は歓喜の輪の中で涙を流したが、それには理由があった。「去年の11月1日の試合で、5回まで投げて2点リードでマウンドを降りた。そこから逆転されて、チームは勝ったけど、(自分の白星が消えた)その時のことが頭をよぎった」。

2年越しのプロ初勝利は、リリーフ陣が踏ん張ってつかんだものとなった。「いつも助けて頂いているリリーフの人が抑えてくれた時に、労いの言葉をかけられるようになりたいと思っていた」という右腕の願いがようやく実現した。

初勝利のウイニングボールは「せっかくなのでいただきました」

昨季はイースタン・リーグで勝率1位に輝いた阪口のプロ初勝利は、当時2軍監督だった三浦監督にとっても感慨深いものだった。選手から渡された監督初勝利のボールを、指揮官はそのまま阪口に渡した。阪口は「最初は監督のためのボールだと思っていたが、せっかくなのでいただきました。どちらが正解なのか分からなかったが、監督に言われたので」と周囲を笑わせた。

三浦監督は「去年もファームで日に日に成長していたし、オープン戦でもいい投球を続けていた。開幕ローテからは漏れたが、しっかり調整してくれた」と、自身の初勝利をプレゼントしてくれた愛弟子に感謝した。投球数が100球を超えた5回のピンチは継投の選択肢もあったが、「今日だけではなく、今後のことも考えた」と続投させ、「自分で乗り越えたことによって、阪口にとっても大きな財産になったと思うし、本当に大きな1勝になった」と期待に応えた右腕の初勝利を喜んだ。

開幕8戦勝利なしの新監督のピンチを救った“三浦チルドレン”。どん底から反攻の狼煙を上げた。(大久保泰伸 / Yasunobu Okubo)

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