[Drone Design]Vol.25 導入が始まる消防現場を支援するドローンたち

2021年2月21日に栃木県足利市で発生した大規模な山火事は8日間燃え続け、3月1日に「鎮圧宣言」が出されたものの、延焼は無くなったと判断する「鎮火宣言」まで出火から23日を要しました。ニュースで現場をパトロールする消防隊員たちの姿を見ましたが、広大な山中を目視で火種が残ってないか確認するのはかなり大変そうでした。山火事に限らず消防活動において火元を正確に把握するのは非常に大事なことだといえます。

そこで期待されているのがドローンの活用です。人が近付けない場所や状況が把握しづらい火災現場を上空から確認し、的確な指示を出す手段としてドローンを使う動きは世界各地で以前よりかなり積極的に進められています。

日本

日本でも静岡県焼津市が全国で初めてとなるドローン隊を結成し、選ばれた8名の第一期生が2019年から飛行訓練を行っています。2020年には出初め式の一斉放水をドローンで飛行撮影する様子が披露され、そこから「SKY SHOOT(スカイシュート)」というチーム名が名付けられました。

20年には新たに4名の女性隊員を含む8名が2期生として加わり、16名の隊員全てがドローンパイロットの資格を取得しています。使用しているドローンはDJIのPhantom 4で、市内を4つに分けた各方面隊に1機ずつ計4機を保有しています。最大飛行時間は約20分で、最大通信距離は約2km、搭載しているカメラは4K動画撮影が可能です。

さらに今年の3月11日には車体の上部からドローンが離発着できる消防指揮車が導入され、大規模火災や災害時に出動する体制が整えられました。

配備された車両は消防カラーの5人乗り1600CCのワゴンで、車内には運搬スペースとドローンからの映像をモニタリングする19インチのカラーモニタが装備され、悪条件下の現場にも近づけるようチューンされています。屋根の部分に広いドローンポートが設置され、もう一つ、稼働タイプの地面に設置できるポートは裏面をホワイトボードとしても利用できます。

米国

2020年10月のナショナルジオグラフィックスの記事によると、米国では山林火災が多いオレゴン、カリフォルニア、コロラドなどの州で約20機のドローンを30名のパイロットが使用しているとのこと。連邦山火事管理技術法(the federal Wildfire Management Technology Act)の整備で台数が倍増され、民間のドローン会社からの支援もあわせて行われています。

ネブラスカ大学のスタートアップDroneAmplified社が開発したドローンによる独自の火災消化技術「IGNIS 2.0」は、大型6ローターのDJI Matrice 600に搭載した"Dragon Eggs"と呼ばれるピンポン玉サイズの焼夷弾でバックファイアを起こし、4分間で最大450個、指示された場所へ的確に落とすことで延焼を食い止めます。

ある火災現場では、ヘリや飛行機を使った空からの広範囲な消火活動では難しい、夜間や消火剤が届きにくい急斜面エリアなどの消火活動に役立てられました。同記事では消火活動にドローンを活用しようという動きは高まっており、近い将来には複数のドローンを一斉に飛ばして消火する技術が登場するかもしれないとあります。

欧州

欧州では完全自律飛行で火災現場の情報を収集するドローンが注目されています。スイスと米国に拠点を持つFotokite社が開発した「Fotokite Sigma」システムは、カイトと呼ばれる有線タイプのドローンとコントロールするGround Station(地上局)で構成されています。現場に急行するファーストレスポンダーを空からの情報でサポートするために、起動から偵察、着陸までボタンを押すだけで使えるよう設計されています。

ドローンには熱源を探知するサーモカメラと低照度カメラが搭載され、現場の状況はタブレットかパソコンでモニタリングできます。操作する範囲は限定されるものの、GPSが無い場所でも誰でも確実に飛ばせて、24時間継続して現場を定点観測することもできます。Ground Stationは地面に設置したり車の屋根に載せたりいろいろなタイプがあり、山火事の現場で消化状態を把握するために使用する様子などを動画で紹介しています。

まとめ

林野庁によると日本では、冬から春にかけて風が強い乾燥状態が続く時期に山火事の発生が増えるそうです。人口減少で手入れされず人目が届かない山里は特に危険で、これからはドローンで定点観測する事例も出てくるかもしれません。海外では消火活動が可能なドローンをデザインしようという動きもあり、それについてはまた機会があれば紹介したいと思います。

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