巨人・井納に懲罰が効くのか疑問 宇宙人ぶりを知るDeNA関係者が本音

二軍降格中の井納

【赤坂英一 赤ペン!!】「だから言わんこっちゃない。あいつはヤクルトに行くか、ウチに残ったほうがよかったんだ」

先日、DeNAの関係者がこう言って苦笑していた。「あいつ」とは、巨人にFA移籍しながら登板1試合だけで二軍に降格した井納のこと。

3月31日の中日戦で初先発した井納は、初回に3点リードをもらった直後のその裏、5安打4失点。その前には自分の不注意で頭部を縫うほどの裂傷を負い、登板予定が遅れていた。原監督が激怒して二軍落ちを言い渡したのも無理はない。

しかし「そんな懲罰が井納に効くかどうかは疑問」と、先のDeNA関係者は指摘している。

井納は若手時代に二軍再調整に入ると、本拠地・横須賀ではなく西武の所沢や日本ハムの鎌ケ谷で登板させられていた。あえて遠くへ行かせて、プロの厳しさを認識させようという首脳陣の方針によるもの。大抵の若手はこんな扱いを受けると気が引き締まるという。
「でも、井納だけはいつもケロリとしていたよ。どんなことを考え、どういう練習をどれだけやってるかをコーチに聞かれても、ほとんどまともな答えが返ってこないんだから。ぬかにくぎというか、のれんに腕押しというか」

井納が宇宙人と呼ばれているゆえんである。「頭をケガしたと聞いたときも、井納ならやるだろうと思っていた」とか。

それだけに、ずぶとさと頑丈さなら折り紙付き。だからDeNAで8年間、先発ローテに入って投げ続けられたのだが、勝ち越したのは2シーズンだけ。唯一2桁の11勝を記録したのは2014年だけで、この年は9敗。残る6年はすべて負け越しで、貯金が計算できる投手ではない。

「要するに、井納の一番の価値は、1シーズンを通して長い回数を投げられる投手“イニングイーター”であることなんだ。だから投手不足のウチやヤクルトにはうってつけ。少々打たれても文句は言われない。常に勝利を求められる巨人で投げるのは、井納には荷が重いはずだよ」

とは、井納を知る横浜OBの元投手の証言。

ちなみに「そういう情報なら、原監督の耳にもちゃんと入っていた。それでも井納を獲ったのは、菅野がメジャーに移籍することを前提として補強計画を立てていたから」と巨人関係者は言う。その菅野も登録抹消となった今、井納の次回登板が改めて注目される。いつになるやらわからないが。

☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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