地域の素材を最大限生かそう 農業遺産のオンラインカフェ最終回

地域素材の生かし方や観光について、世界農業遺産オンラインカフェで語る西谷雷佐さん(和歌山県みなべ町芝で)

 和歌山県の世界農業遺産「みなべ・田辺の梅システム」を次世代に継承していこうと実施している「世界農業遺産オンラインカフェ」(和歌山大学南紀熊野サテライト主催、まちキャンパスプロジェクト共催)の最終回となる第6回がこのほどあった。「インアウトバウンド仙台・松島」代表取締役で「たびすけ合同会社西谷」代表の西谷雷佐さん(48)が地域素材の生かし方をテーマに話し、和歌山大学の学生や南部高校の生徒らが聞いた。

 西谷さんは青森県弘前市出身。高校卒業後、アメリカ・ミネソタ州立大学で学び、東北をはじめ、各地で地域資源を生かした観光施策を企画するなど、幅広い活動をしている。

 講座では「地域ならではを最大限に生かす」をテーマに観光を切り口に話し、食事の用意や片付けなどを代行し〝忍者〟がもてなす「手ぶらで観桜会」▽農家がこだわるリンゴの剪定(せんてい)を体験し、切った枝で焼きリンゴを楽しむなどするツアー▽棚田のあぜ道を歩き、能面作家を訪問したり、湧き水を自分でくんでお茶を沸かして飲んだりするウオークツアー―など数々の事例を紹介。

 単に観光客の入り込み数を考えるのではなく、お金を使ってもらえる場所をつくり、地域への経済効果に結び付けること、地域資源を単発ではなく、掛け合わせて相乗効果を生み出すことの重要性を説明した。

 地域にあるものをいかに生かすか、そうした発想、取り組みのためには、地域の歴史を勉強するなど教養や、地域素材を組み合わせ、物語性を持たせるといった編集力が大事だと強調。

 魅力活性の源泉は、また会いに行きたいと思われるような人にあるといい、地域に愛や誇りを持つ人を育てることが、結果的に人を引き寄せることにつながると語った。

 今は、国連の「SDGs(持続可能な開発目標)」のように、環境への配慮や「持続可能」ということが世界の主流となりつつあり、持続可能でなければ観光地として世界から選ばれないし、「日本だけ見ていては駄目。世界を見ないといけない」と話した。

 また「固定観念にとらわれない発想力やエネルギーは若い人の方があると思う。皆さん、発想して、どんどん発表してほしい。大人にぶつけてほしい」と呼び掛けた。

 6回の講座を振り返り、南部高校1年、異文化交流部の沼野竜久君は「初めは何も知らなかったけれど世界農業遺産についてかなり知識が深められ、良い経験になった。後輩たちにも知識を広めたい」と話した。

© 株式会社紀伊民報