北朝鮮当局の動きが鈍い中でも高まる貿易再開への期待

1年以上続くコロナ鎖国で苦境の増す北朝鮮では、国境に接する各地域に大規模な消毒施設が建設されていることが伝えられている。

例えば、北朝鮮最大の貿易都市、新義州(シニジュ)郊外の義州(ウィジュ)飛行場に、出入国者と貨物に対してコロナ検疫を行う施設が建設されていると米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。これに伴い、近日中に貿易が再開されるのではないかとの見方が示されているが、北朝鮮当局の動きは鈍いようだ。

北朝鮮貿易に明るいデイリーNK内部情報筋の説明によると、各貿易会社は、基地長(小規模個人事業主)や個人事業家から、既存の輸入実績と今後の輸入計画などの書類を集めた上で、朝鮮労働党に提議書を提出しワック(取扱い枠)の申請を行う。

中央党(朝鮮労働党中央委員会)、内閣、国家保衛省(秘密警察)は、提議書に書かれた内容が事実か否かを確認するなど審査を行い、ワックを発行する。すべての手続きを行うには1ヶ月ほどかかる。

各貿易会社は、これらの手続きを既に終えているが、今のところ発行に関する公式の指示は下されていないとのことだ。

そのことから、4月中の貿易再開は難しいのではないかとの見方がなされている。ただ、緊急時には提議書の審査を急いで行いワックを発行する事例もあり、元々ワックを所有していた貿易会社や個人も改めて審査を受けよとの指示があったことから、時期は不明ながら、そう遠くないうちに貿易が再開されることは確実視されている。

なお、昨年1月以降も輸出入を認められていた権力機関所属の貿易会社は、ワックの再審査は必要ないが、実際にどれほどの党の資金を使い、どれほどの売上があったのか、また韓国のビジネスマンとの関係はないか、韓国製品、日本製品の輸入は行なっていないか、取引のある中国側の業者が韓国、日本、米国と繋がっていないかなどを含めて、厳しい審査を行う予定だという。

もし、日米韓との直接・間接の取引が明らかになれば、ワックが取り消され、貿易そのものに関わることが禁止されるようだ。

北朝鮮は昨年12月の最高人民会議常任委員会第14期第12回総会で「反動的思想・文化排撃法」を成立させ、韓流を始めとした海外の文化コンテンツへの取り締まりを今まで以上に強化しているが、韓流に接した結果として現れる韓国製品への憧れ、さらには韓国そのものへの憧れの広がりを、新型コロナウイルス同様に危険視している現れだろう。

いずれにせよ、貿易を再開させるには、北朝鮮国内外のコロナ感染状況が好転する必要があるが、「内部的には状況が良いとは言えない」(情報筋)とのことで、再開にさらに時間を要することも考えられる。

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