【レースフォーカス】ホンダとKTM、カタールでの2レース目に生じたわずかな違い/MotoGP第2戦ドーハGP

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 カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで、2週連戦で行われたMotoGP第2戦ドーハGPでは、開幕戦に続きホンダがトップ10を逃す結果になった。そして開幕戦でホンダ勢と同じように下位に沈んだKTMは、ブラッド・ビンダー(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)が8位でフィニッシュを果たしている。ホンダとKTMの間に生まれた差。そこには何があったのだろうか。
 
 ホンダ勢について、まずはLCRホンダのふたりから触れていきたい。中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)は、16番グリッドからスタートして一時は14番手に浮上したもののポジションを落とし、17位でレースを終えた。
 
 中上を苦しめたのはフロントタイヤだった。これについては金曜日から訴えており、土曜日の予選を終えたあとには次のように語っている。
 
「ホンダにとって、カタールでのフロントタイヤのフィーリングはいつもよくないんです。僕たちはハードタイヤもミディアムタイヤも使えず、選択肢はフロントもリヤもソフトだけ。でも7周から8周以上すると、僕たちには特にフロントエンドがマネジメントが難しいです」

 中上がこのとき語ったところによれば「ホンダのライダーは(フロントタイヤに)みんな苦戦しています」ということだった。そして、レースでは自身が触れていたとおりの展開となった。中上はフロントのソフトタイヤが序盤で終わってしまったのだと語る。
 
「レース序盤は(フランコ・)モルビデリの後ろで、どこでモルビデリをオーバーテイクできるだろうと考えていました。けれど7、8周目のあと、フロントタイヤのパフォーマンスがかなり落ちたように感じたんです。特に、右側のサイドグリップですね。もしこのまま攻めていたら、転倒するだろうと思いました。難しい決断でした。でも、レースを完走しなければならなかったんです」

 ドーハGPのフロントタイヤは、ソフト、ミディアム、ハードの3種類で、ミディアムタイヤだけが左右非対称(右側が硬め)のアシンメトリー。ミディアムタイヤ、という選択肢はなかった? と聞くと「ありませんでした」という回答だった。
 
「ミディアムタイヤはあまりいいフィーリングではなかったし、僕はミディアムの右側のフィーリングが好きではありませんでした。ソフトからミディアムに変更してまったく同じ場所でバイクをリーンさせると、テストではミディアムタイヤでクラッシュしました。限界を見つけるのが難しかったんです。ですから、その選択肢は外しました。ただ、ソフトも僕たちにとってベストな選択肢ではないとわかっていました」

 ベストなタイヤではなかったが、フロントにソフトを選ばざるをえなかった、ということだ。この状況は、後述する開幕戦カタールGPのKTM勢の状況と似ているように見える。
 
 まずは、ホンダの話を続けよう。中上のチームメイトであるアレックス・マルケス(LCRホンダ・カストロール)は13周目に転倒を喫してリタイア。転倒は自身のミスだったとしながら、アレックス・マルケスも中上と同じように、フロントタイヤをこの日の問題に挙げていた。
 
「主な問題は、フロントタイヤだった。僕たちには(ソフトは)少し柔らかいんだ。僕たちは(フロントタイヤの)右側に苦しんでいた」

 一方、ファクトリーチームライダーふたりのコメントは少し異なっている。ポル・エスパルガロ(レプソル・ホンダ・チーム)は15番手からスタートして一時は10番手に浮上した。しかし、レース後半に「ふたつの大きなミスをした」ためにポジションを落とし、13位でフィニッシュ。ミスのために後退したものの、上位陣とそん色ない1分55秒前半のタイムを刻んでおり、ペースにはおおむね満足しているようだった。
 
 また、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)の代役として参戦したステファン・ブラドルは11番手スタートだったが、スタートでミスをしたために後退して14位だった。ただしスタート後のフィーリングはよかったと語っていた。ポル・エスパルガロ、ブラドルともに、決勝レースではミスが響いた結果だったようだ。
 
 決勝レース後は言及がなかったが、その前日の予選後、フロントタイヤのフィーリングについて中上やアレックス・マルケスは苦戦しているがブラドルはどう感じているのか、と質問したところ、こんな答えが返ってきた。
 
「フロントについては(中上やアレックス・マルケスと)同じように苦戦しているよ。でも、ホンダはラップタイムを出そうと思ったらフロントタイヤをプッシュしないといけない。これが今の(ホンダバイクで)走るのに必要なことだ。いつもフロントに苦戦している」

「でもここカタールでは、僕たちにとって難しい。ホンダのバイクの特徴に合っていないからだ。だからフロントタイヤをプッシュしている。でも、どんな場合でも、限界までプッシュしないといけない。いつもフロントタイヤは危険なんだ」

■フロントにミディアムタイヤを選択したKTM

 さて、開幕戦カタールGPではミゲール・オリベイラ(レッドブル・KTM・ファクトリーレーシング)の13位が最上位という結果に終わったKTMである。第2戦ドーハGPでは、ビンダーが8位に入った。18番手スタートだったのだから、大健闘だろう。
 
 KTMはドーハGPで、前戦とは異なるタイヤを履いていた。すべてのKTMライダーがフロントにミディアムタイヤを選択したのである。ここがカタールGPとの違いだった。
 
 開幕戦のKTMは、フロント、リヤともにソフトタイヤを選択。しかし、ビンダーもオリベイラもフロントタイヤの右側が終わってしまい、ペースを上げられなかったと語っていた。
 
「僕たちにとってはとても厳しいレースだった。開幕戦との大きな違いは、フロントタイヤが最後までもったこと。先週は残り9周だったけれど、(今回は)すべてのレースで攻められた」と、第2戦を終えてビンダーは語った。

 とはいっても、ミディアムタイヤでのレースは簡単なものではなかったようだ。
 
「3回も(ミディアムタイヤで)予想外のクラッシュしたことを考えると、選ぶのはかなり怖かったよ。でも、選択肢がなかった。ソフトタイヤは選べなかったんだ」

 予選に履いたフロントタイヤが2度目のアタックまでもたなかったことで、好むと好まざるにかかわらずミディアムタイヤを選ばなければならない、とわかったという。そしてさらに、ビンダーは自身の走りをタイヤに適応させた。
 
「タイヤの片側からもう片側に切り返すときには、細心の注意を払った。ほとんどバイクが立った状態でブレーキをかけ、ゆっくりと(コーナーへ)入らないといけなかった。バイクを傾けた状態でブレーキングをすれば、フロントがロックしてしまう。だから、僕は自分のライディングスタイルを少し変えないといけなかった。特に、右コーナーの進入でね。でも、それを理解すれば、うまく前に出ることができたよ」

 チームメイトのオリベイラは15位でレースを終えたが、これはトラブルが発生したことが大きかった。開幕戦後、オリベイラは「カタールでは、僕たちはソフトタイヤを使いたくて選択しているのではなくて、ほかのタイヤを選べないので使っている。ミディアムタイヤはカーカスとラバーのコンビネーションがよくない」と語っていたが、ミディアムタイヤは第2戦ドーハGPの決勝レースでうまく機能したようだった。
 
「もしフロントにソフトタイヤを履けば、10周後にはタイヤがもうもたなくなるとわかっていた。だからミディアムタイヤでいくことにしたんだ。そして、それはうまくいったよ。ブレーキング時の安定性、ブレーキのパフォーマンスを考えれば、それはベストなタイヤではなかった。かなり揺れがあったからだ。でもアンダーステアでもなかったね」と、オリベイラはミディアムタイヤでのレースを振り返った。

 KTMにとっては、おそらく難しい決断ではあっただろう。けれど、フロントにミディアムタイヤを履くという選択と、ビンダーのような走り方の適応など、小さな変更や挑戦が重なり合って、総合的によい結果をもたらした。

 ところで、オリベイラに発生したトラブルは、ダッシュボードが表示されなくなるというもの。シフトチェンジのタイミングを知らせるライト、選択中のギヤやマッピング、タイヤの情報を得られない状態だった。
 
 沈黙するダッシュボードのままシフトチェンジを余儀なくされたレースにどう適応したのか、と問われてオリベイラはこう答えていた。
 
「とても孤独なレースだったし、何度もシフトミスをした。カタールでは、(シフトチェンジのタイミングを示す)シフトライトはとても重要だ。感覚で走ろうとしたんだけどね。カタールでは、とてもたくさん走ってきたから。(ダッシュボードが表示されているときと)だいたい同じポイントでシフトチェンジしようとした。でも、あとからデータを見ると、僕のシフトチェンジはそのとおりではなかった……(苦笑い)」

 MotoGPライダーにとって、ダッシュボードからの情報がいかに重要なものだったのかを伺わせるコメントである。また、超高速で競い合うレースの中でそうした様々な情報を得ながら正確にバイクを走らせていることを、あらためて想像させた。
 
 少々脱線してしまったが、ホンダとKTMの第2戦は少し違ったものだったように見える。そして、第3戦ポルトガルGPの開催地アウトドローモ・インターナショナル・アルガルベは、難しいレイアウトのサーキットだ。そこではまた異なる展開を見せるのだろうか。