新型コロナ関連破たん、年明け以降大型化の兆し

 「新型コロナウイルス」関連破たん(以下、コロナ関連破たん)は3月末までに1,256件(負債1,000万円未満を含む)発生した。
 全体の企業倒産が低水準に抑制されるなか、月次のコロナ関連倒産は2月126件、3月148件と最多を更新し、増勢が鮮明になっている。
 今年に入り負債10億円以上の大型のコロナ関連破たんが目立ってきた。ホテルや飲食業のほか、製紙業や出版、建材や化粧品製造など、業種も多岐に渡っている。
 コロナ禍は1年を経過したが、収束や事業環境の好転は見通せない。だが、影響は2次、3次の取引先にまで広がり、中堅規模以上の企業でも息切れが表面化してきた。

大型倒産 最多は2020年4-6月の30件

 負債総額10億円以上の大型のコロナ関連破たんは、3月末までに80件を数えるが、全体の6.8%にとどまる。負債1億円未満が半数以上を占め、体力の乏しい小・零細企業に集中している。
 負債10億円以上の四半期毎の推移は、最多は2020年4‐6月で30件。同期間にはこれまで最大の負債額となった(株)ホワイト・ベアーファミリー(TSR企業コード: 570615267、大阪府、旅行業、負債278億円)や、その関連会社のWBFホテル&リゾーツ(株)(TSR企業コード:012267023、大阪府、ホテル運営受託、負債160億円)、コロナ破たんでは初の上場倒産となった(株)レナウン(TSR企業コード: 295833440、東京都、アパレル販売、負債138億円)などの大型倒産が頻発し、世間を騒がせた。
 インバウンド需要の消失や、緊急事態宣言下での外出自粛などの直撃で、急激に業績が悪化し、資金繰りに行き詰まるケースが相次いだ。
 だが、その後は2020年7-9月が10件、同10-12月は14件にとどまり、大型倒産は落ち着きをみせる。コロナ関連破たんの軸足は飲食店など、サービス業を中心に小・零細企業に移った。

「コロナ禍での倒産減」で大型倒産も減少

 コロナ関連融資などの支援策は、導入時に申込みが殺到して混乱したが、次第に行き渡り、企業の資金繰りを下支えした。
 これを裏付けるように全国の企業倒産(コロナ関連破たん以外も含む)は、減少の一途をたどった。2020年5月は、緊急事態宣言で裁判所の業務が停滞したこともあって月間314件と歴史的な低水準を記録した。その反動で翌6月は前年同月を上回ったが、7月は再び前年同月を下回り、以来連続して前年割れが続いている。
 2021年に入っても同じ傾向は続き、1月(474件)は過去50年間で3番目、2月(446件)は最少と、歴史的な低水準を記録した。  「コロナ禍での倒産減少」は続く一方で、1月以降はコロナ関連破たんが増勢に転じている。なかでも1-3月の負債10億円以上の大型倒産は、2020年4-6月に次ぐ、20件と増加が顕著だ。
 事業規模を示す従業員数別のコロナ関連破たんも、従業員50人以上の2021年1-3月は、最多だった2020年4-6月期(28件)以来、3四半期ぶりに反転して増加。負債額別と同様の推移をたどっている。

年明け大型化

大型倒産、コロナ以前からの不振が共通

 2021年1-3月期のコロナ関連破たんの負債額順では、最大がクラフト紙製造の大興製紙(株)(TSR企業コード:440024757、静岡県、会社更生、負債140億800万円)、雑誌出版の(株)枻出版社(TSR企業コード:292324448、東京都、民事再生、負債58億円)と続く。
 いずれも、直撃を受けたわけではないが、紙需要の減退や出版不況など、以前から構造的な問題を抱えていた点が共通している。
 このほか、業界の不振や過剰な設備投資など、個別の事情で不振が続いてきたところにコロナ禍の影響がのしかかり、悪化に拍車をかけた事例が目立つ。

年明け大型化

 内閣府がまとめた各省庁の支援事業の執行状況によると、給付や助成を除いた、政府系や民間の金融機関の実質無利子・無担保融資(ゼロゼロ融資)などのコロナ関連融資の執行件数は、3月末までに214万1,266件、執行総額額は38兆3,284億円に及ぶ。
 コロナ禍での厳しい事業環境のなかで中小企業が資金繰りを維持できたのは、こうした官民一体の支援策に依る部分が大きい。
 一方、ここにきて融資で得た資金も底を尽き、追加の資金調達がかなわないケースも出始めた。上場企業などの大手は、メーカーなどを中心に、一部で業績回復の兆しが見られる。だが、コロナ禍で大幅赤字や事業縮小など業績悪化が深刻な業種もあり、二極化が鮮明となっている。業績不振が続く上場企業では、事業再生ADRなどで私的整理を模索する動きも活発化している。
 大型のコロナ関連破たんの増加は、コロナ禍から1年を経て、倒産を抑制してきたブレーキが、徐々に緩んできた表れともいえる。
 余裕のない資金繰り、深刻な業績悪化で、コロナ関連融資の下支え効果も薄れつつある。
 こうした点を背景に、息切れの範囲がより規模の大きい企業にも波及してきたことを中堅クラスの倒産が示している。
 コロナ関連破たんは増勢が続くが、件数の推移と同時に、今後は大型倒産の動向にも目が離せなくなってきた。

(東京商工リサーチ発行「TSR情報全国版」2021年4月7日号掲載「WeeklyTopics」を再編集)

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