イノシシ防除にヒツジが活躍 景観改善、休耕地再生にも効果 平戸・中瀬草原キャンプ場

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雑草を食べるヒツジ。イノシシ被害の防止にもつながっている

 長崎県平戸市田平町の中瀬草原キャンプ場が、昨年4月にリニューアルオープンして1年が過ぎた。以前、周辺は雑草が生い茂り、イノシシのすみかになっている場所もあったが、運営する民間会社「中瀬草原キャンプ場」(同市、白石悦二社長)は雑草処理にヒツジ10匹を投入。想定以上の効果を上げている。

◇秘密兵器
 同キャンプ場は、旧北松田平町が整備。2005年の自治体合併後、平戸市が継承したが、施設の管理が十分に行き届かない状況が続き、市はキャンプ場を再整備した上で同社に運営を引き継いだ。
 ダンチク、セイタカアワダチソウ…。リニューアル前、キャンプ場周辺には雑草につる草が絡み付いた状態で密生。一部、イノシシがすみ着いている場所もあった。つる草が付いた雑草は、機械での刈り払いが困難。そこで、同社が雑草処理の秘密兵器として投入したのが、島原市のNPO法人から借りていた10匹のヒツジだった。
 ヒツジは、つる草やセイタカアワダチソウなどを好んで食べる。人の手では処理が難しかった雑草を黙々と食べ続け、景観は飛躍的に改善。同社によると、敷地を囲む山林、境界付近の雑草が生えやすい箇所(林縁部)の管理を徹底したことでイノシシも姿を見せなくなり、捕獲用のわなを撤去したという。
 同キャンプ場の成果を受け、田平町中央公民館は、雑草が繁茂する休耕地(約千平方メートル)に同社から借りたヒツジ2匹を放し、畑を再生。小麦づくり体験講座を実施している。同公民館の赤木寛参事は「イノシシ防止のワイヤメッシュ柵に絡んだつる草は処理がしにくい。そういう箇所もきれいにしてくれる」と働きぶりを高く評価する。
 ヒツジの奮闘を知った同町大崎地区の住民も、同社に派遣を要望。3月から活動しており、耕作放棄地の再生とイノシシ防除の両面で効果が期待されている。

景観の維持・改善にヒツジの活躍が欠かせない中瀬草原キャンプ場=平戸市田平町

◇最善の策
 白石社長がこの1年、キャンプ場の景観維持・改善に取り組む中で実感したのは「山林や休耕地が荒廃すると簡単に元に戻せない」という現実。今回はヒツジ作戦が奏功したが、イノシシ対策として侵入防止柵などを設置しても、その周りに耕作放棄地や手入れされていない山林が広がっていれば、イノシシが生息しやすい環境になっていることに気付いた。
 白石社長は「わななどでイノシシを捕まえて駆除するのは根本的な解決にならない。イノシシが好む環境をなくすことが最善の策」と指摘する。
 市内では農家の後継者不在などに伴い耕作放棄地が増え、イノシシの生息数も拡大している。同社は、ヒツジの飼育を学ぶ羊飼い養成講座も計画。白石社長は「1次産業、農林業、畜産業の後継者育成につなげたい」と今後を見据える。
 同キャンプ場は広々とした草原と平戸瀬戸、平戸や壱岐などの島を一望できるロケーションが会員制交流サイト(SNS)などで共有され、週末を中心に多くのキャンプ愛好者が利用。同社は、複数の企業から協業の提案を受けており、まちづくり、地域振興への貢献につなげようと検討を続けている。