インターネット病院が急増する中国、成長するヘルスケア経済圏の実態とは?

ウイズ・アフターコロナの時代、中国ではインターネット専用の病院の設立が急増しています。国によるインターネット+戦略による推進もありますが、新型コロナ感染拡大期に、発熱、慢性病、日常的に見られる軽い症状を対象にオンライン問診・診療を速やかに実施したことも後押ししています。

インターネット病院は、病院以外の第三者の事業体の参入も可能です。例えば、IT企業が既存の病院と連携してインターネット病院を設立し、更に傘下に抱えるオンラインのリハビリサービスを組みあわせることで、ヘルスケアに特化した経済圏を形成しつつあります。


全国に1100のインターネット病院

2021年3月末、中国の国家衛生健康委員会は、「不完全な統計ながら、現在、全国にはインターネット専用の病院が1100病院、開設されている。更に、(地域の中核病院にあたる)2級病院のうち、7700以上の病院でオンライン診療が可能となっている」と発表しました。

2019年末の全国の2級病院の数が9687病院であることを考えると、79.5%が何らかのオンラインでのサービス提供を始めていることになります。

インターネット病院とは?

インターネット病院とは、既存の病院が自身の病院で抱える医師、設備、サービスなどの資源をオンラインで提供するケースと、第三者の企業が既存の病院と連携することで開設するインターネット専用の病院のケースがあります。2018年9月の「インターネット医院管理弁法(試行)」の発出後、開設の条件などが明示されたことで、申請件数が増加しました。

2020年前半時点の報告になりますが、動脈ネットによる「インターネット病院政策報告」によると、全国497病院のインターネット専用病院のうち、既存の病院が開設申請をしているケースが83.5%を占め、企業による連携による申請はわずか16.5%ほどでした。企業としては、ネット診療やIT、ヘルスケアサービスを提供する企業を中心とし、医薬、保険、医療器械の会社なども申請をしています。

提供される医療サービスを限定

オンライン診療については、慢性病疾患の患者の再診や日常生活でよく見られる軽い症状に限定されています。医師による実際の診療が必要となった場合は、同じくアプリやネット上で予約をとって、診療を受けることになります。

第三者の企業が既存の病院と連携してインターネット専用の病院を開設する場合、別途提携したその他の医療機関の医師が医療サービスを提供することもあります。いずれにしても医療機関、医師などによるサービス提供を義務づけています。

インターネット病院普及の背景

中国においてオンライン診療の普及が進むのは、歴史的に地域による医療格差が大きく、それが長らく解決されずにいたことがあると考えられます。また、新型コロナ感染拡大期に、慢性病の高齢者の通院による二次感染の防止、医療機関の負担軽減といった点から、地方政府やヘルスケア企業によるプラットフォームの構築やオンライン診療、薬の配送サービスの提供といった素地があったことも影響しているでしょう。

もとより、ユーザーの需要は高く、感染が落ち着いた後も買い物など消費のオンライン化が定着したこともあると考えられます。このように、中国では新型コロナにおける経験が、現在のオンライン診療の進展、更にはインターネット病院の普及に大きく貢献していることが分かります。

ヘルスケア経済圏を形成

例えば、EC最大手の1つである京東(JD)は、京東インターネット病院を開設しています。中国全国の病院と連携を進め、診察前、診察中、診察後のオンラインとオフラインのサービス提供の一体化を目指しています。

コロナ感染拡大期に見られたような、オンライン診療+薬の配送に加えて、地域によっては、公的医療保険の適用による治療費の支払い、電子カルテ、診療による慢性病や疾病の経過管理、リハビリサービスの提供など、患者の疾病履歴などをオンライン上で管理することで、ワンストップのサービス提供が可能となっています。

このように、EC最大手の京東は、患者の疾病に関する診察から回復までの包括的なサービスを提供することで、ヘルスケアに特化した経済圏を形成しつつあります。

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