19歳女性「土木技術で貢献を」 熊本地震で被災、建設の道へ

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下水道の工事現場で測量する藤川優茉さん=熊本市南区

 熊本県御船町の藤川優茉[ゆま]さん(19)は、高校で学んだ土木技術を社会のために生かそうと、建設会社に就職した。御船中3年の頃に熊本地震を経験。道をふさいだ岩を手でどかしてもらって避難した経験が、今の道に進むきっかけとなった。

 3月下旬、熊本市南区の下水道工事現場。身長148センチの藤川さんは背丈ほどの測量機器を抱え、てきぱきと動き回っていた。

 2016年4月16日の本震後、藤川さんら家族6人は車で御船中を目指したが、崖崩れで落ちた岩が行く手を阻んだ。両親は車を降りて岩をどかし、車を進めた。それを何度も繰り返した。しかし、たどり着いた先は他の車で満杯。町ふれあい広場に移動し、車中泊を1週間続けた。

 当時、藤川さんは吹奏楽部の副部長。楽器が無事だったことが分かると、仲間たちに演奏会を提案した。御船中に避難している住民たちを音楽で励ますのが目的だった。

 実現したのは4月29日。それまで相次ぐ余震におののき、登校できない日々が続いていた。久しぶりに吹奏楽部の仲間と会ってみると、「当たり前と思っていたことは、そうじゃないかもしれない」と思えてきた。

 避難者を激励する演奏会のはずだったが、藤川さんはホルンを奏でながら涙が止まらなかった。それでも、避難者は「ありがとう。元気が出たよ」と感謝してくれた。「自分も誰かのためになることができる」と力が湧いてきた。

 その力を社会で役立てるため、中学卒業後は熊本工高の土木科に進学。高校を出ると、熊本市中央区の建設会社「岩永組」に就職した。岩永組の土木部門では初めての女性技術者。現場に出向き、測量や図面の作成などに携わっている。

 「災害があった時、真っ先に現場へ向かうのは土木作業員。道がぼこぼこじゃ救急車も通れない」。藤川さんがいつも思い出すのはあの日、避難を困難にした岩だらけの道だ。社会に出た今はさまざまな現場で、土木が果たす役割の大きさを改めて感じている。

 「熊本が災害に強い街になるよう、私も貢献していきたい」(鬼束実里)