音楽のプロとはどういう存在? 崎山蒼志の考える“仕事観”

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崎山蒼志がAbema TVのバラエティ番組「日村がゆく」に登場したのが2018年のこと。高校生(収録時には中学生)だった彼のパフォーマンス映像は、SNSでまたたく間に拡散され、日本中に名を馳せた。

今年1月、アルバム『find fuse in youth』のリリースとともにメジャーデビューを果たし、「職業:プロ・ミュージシャン」として自身のキャリアを邁進するなか、崎山は仕事としての“音楽活動”をどのように捉えているのだろうか。

「表現を追求したい」崎山の考える“プロ”としての意識

――メジャーデビューをされ、高校もご卒業された今のタイミングだからこそ、崎山さんにお聞きしたいことがあります。ご自身では“プロ・ミュージシャン”像をどのように捉えてらっしゃいますか?

まず音楽への厳格さをもっている人はプロだと思っています。逆に「音楽で食べていく」「メジャーデビューする」というのが、今では絶対条件じゃないというか。

たとえば本業がミュージシャンじゃなくても、とんでもなく良い曲を世に出せる人に出会う機会が増えました。急にいろんな段階――オーディションやコンテストに出たり、事務所に所属したり、という過程をすっ飛ばし、自分の力で多くの人の耳に刺さる音楽を流通させるアーティストもいらっしゃると思います。

――確かに、昔のように「プロ/アマ」を分ける境界線が明確ではなくなっているようにも思います。必ずしも「音楽だけで生きている人=プロ」というわけではなくなった現在、プロをプロたらしめる基準はなんだと思いますか?

名前だと思います。「この人が新曲を出した」という情報だけで音楽を聴いてくれる人がいるなら、それはもうプロなんだと。

ただ一方で、僕自身はあまり「プロ/アマ」という言葉を意識したくない気持ちがあります。メジャーデビューをし、高校を卒業したことで、僕自身も改めて“プロ・ミュージシャン”になったことは確かなのですが……今後音楽をやっていくなかで、自分が“プロ”である以上に、大切にしたいことが徐々に見えてきました。

――大切にしたいこととは何でしょう?

自分自身がやりたいと思う表現を追求することです。徐々に活動領域が増え “自分の楽曲を聴いてくれている人の存在”に気づけるようになったからこそ、もっとメロディや歌詞に敏感になって、細部まで景色や空気感を表現していきたい。

その意味で、今回出した新曲『逆行』は表現の手札が増えた感覚があって、新しい方向性を見出すきっかけにもなりました。

「映像から曲のイメージが降ってきた」新曲の制作裏

――新曲『逆行』は、メジャーデビュー後初めてのドラマタイアップ作品ですが、『賭????ケグルイ双』の疾走感が歌詞やメロディに反映されていて、今までの作品よりもソリッドな印象を受けました。制作はいつからスタートしたのでしょう?

今年の1月中旬頃からですね。今回の『賭????ケグルイ双』は、“ギャンブルの強さ”で生徒の階級が決まる学園に編入した女の子の物語。『賭ケグルイ』シリーズに登場するキャラクターの前日譚になるので、資料や事前映像だけではなく、『賭ケグルイ』の原作漫画や過去のテレビドラマ、映画作品なども全部観て。『賭ケグルイ』全体の世界観にインスピレーションを受けましたね。

特に『賭????ケグルイ双』の映像からは「こういう曲になりそうだな」というイメージ――それこそ曲の速さや曲全体の構成が降ってくる感覚があって。サビの後の間奏などは本当にパッと出てきました。だから基本的には直感を信じつつも、スタッフさんと話し合いながら制作を進めていきました。

――『賭????ケグルイ双』のどういった要素からインスピレーションを受けたのでしょうか?

ストーリーの展開や、服装、雰囲気、建物の内部などのディテールだったり……あとは、森川葵さんが演じる本作の主人公・早乙女芽亜里さんが賭けに熱中する表情ですね。『賭????ケグルイ双』はそれぞれのキャラクターが賭けに没頭し、文字通り“狂う”さまに魅力がある作品。役者さんたちの演技が曲を作るエンジンになりました。

音楽のインプットを経て自身の「足りなさ」に気づいた

――『逆行』は特定の作品にまつわる依頼を受け、崎山さんが自身の表現としてアウトプットする……という、ある種の受動的なキッカケで生まれた音楽だと思います。普段オリジナル楽曲はどういった作り方で臨むことが多いでしょうか?

オリジナル楽曲を作るときは、アイディアが出てくるままに、とりとめもなく作ることが多いです。中学の時は即興的に生み出された音楽を完成形とすることもありました。

今回の『逆行』はどちらかというとその作り方で、勢いに乗っかって作った気がします。ある意味でオリジナル楽曲を作るときのように、自発的に曲が生まれていく感覚がありました。

ただ自発的な制作とは言っても、最近は大枠で「ここパートからこういう展開になって……」という楽曲の構成を意識することが増えたかもしれません。Aメロ・Bメロ・サビ……という展開をちゃんと考えるようになりました。

――そういった楽曲の構成について意識するようになったのは、いつ頃から?

制作環境が変わったこともありますが、それ以上にコロナ禍の影響が強いかもしれません。これまでの自分の作品をリスナーの立場で振り返る時間が増えて、すごく「足りないな」って感覚を抱くようになりました。実は数ヶ月前に出したアルバムも、自分の中では未熟さを感じていて。今もなお模索している感じが続いています。

――模索、ですか。

完成形に到達しきれていないというか……。例えば、コロナ禍でネガティブな話題が続く中、大貫妙子さんやくるりの歌に、底知れない優しさを感じたんです。そして、とにかく曲の完成度がめちゃくちゃ高い。藤井風さんの作る曲も「もう! どんだけ優しいんだよ!」って思いながら聴いています。長谷川白紙さんや、ラッパーのLEXさんなど、近い世代のアーティストからも刺激を受けています。

みなさんプロ・ミュージシャンとして曲の完成度を高めながらも、パーソナルな部分を純粋に表現されていて、こんなことを僕が言える立場じゃないんですけど、本当に素晴らしい存在だと思います。

だから、僕もオリジナル/タイアップに囚われず、自分の取り柄や個性を活かしながら、純粋な気持ちで曲の完成度を高めていけるようになれれば、プロミュージシャンとして理想だな、と。とにかく自分の表現に意識を張り巡らせていきたいです。僕自身の音楽にある「足りなさ」を補うために、譜面を書けるようにもなりたいし、音楽の理論も勉強していきたいです。

――その「足りなさ」を補い続けた先、最終的に目指すゴールはありますか?

仮に仕事としての音楽をやめても、音楽を続けていたいなと思っています。物腰の柔らかい“音楽をするおじいさん”になるのが理想。ずっと音楽がしたいです。自分の今後に"賭けて"います。

「賭????ケグルイ双」

Amazon Prime Videoにて全8話3/26(金)より毎週金曜日に2話ずつ独占配信
©河本ほむら・尚村透・斎木桂/SQUARE ENIX©2021 ドラマ「賭????ケグルイ双」製作委員会