虎の怪物新人・佐藤輝に「素振りのススメ」〝本物〟になるヒントは地味な練習

聖地に快音響かず…。佐藤輝が空振り三振に倒れゲームセット

阪神は8日の巨人戦(甲子園)に0―3で今季初の零封負けで、連勝は4でストップした。2カードぶりの一発が期待された佐藤輝明内野手(22)も3試合ぶりの無安打で小休止。そんななかでここまで全試合に出場し、奮闘中の怪物新人に往年のアーチストから「素振りのススメ」で一層の成長を願う声が届いている。

リーグ2連覇中の王者・巨人は、簡単には3連戦3連勝させてはくれなかった。相手先発左腕・高橋の前に猛虎打線は、8回途中までわずか2安打。試合後の矢野監督も「きょうは打線でしょ。あまりにもランナー出ないし、ヒットも出ない」と、6回2失点の先発・秋山を援護できなかったことを嘆いた。

本拠地初アーチが期待された佐藤輝も4打数無安打と、聖地の虎党を沸かすことはできず。ここまで12試合で2本塁打の長打が魅力の一方、打率1割6分3厘、リーグトップの21三振と、確実性が課題の打棒は本人も改善の必要性は感じているところだ。そのためのルーティンとして、球団OBで阪神、日本ハムで打撃コーチを務めた柏原純一氏が勧めるのが「素振り」だ。

現役時代は通算232本塁打を放った同氏は「その日の試合で打とうが打てなかろうが、絶対、毎日やるべきで、とくに今の佐藤輝には大事。人にはできない振り切るスイングが武器でもあり、それをさらに磨くためには欠かせない」と話す。

筋トレや科学的な練習メニューが全盛の時代で、この〝地味〟な練習の継続は根気がいる。だが、続ければ、やがて来たる〝壁〟にも対処できる日が「自然にくる」と指摘する。実際、佐藤輝は2月のキャンプで、ボールケース一箱分をたて続けに打つロングティーなどスタミナ系のメニューでは、徐々に下半身がへばり、最後は上体に頼るようなスイングになる傾向があった。だが毎日、素振りをする習慣を身につければ「レギュラーなら年間400打席以上は打席に入るプロで、振るスタミナ、打者としての基礎体力を養うことができる」と氏は言う。

さらに佐藤輝のような天性のアーチストにこそ効果が見込める鍛錬でもある。古くは、王貞治が打撃の師でもあった荒川博氏と、巨人時代の松井秀喜は、当時の長嶋茂雄監督と。柏原氏も南海時代、当時の野村克也監督の自宅に通い「素振り」で長距離砲としての礎を築いた。通算476本塁打の前監督・金本知憲氏は広島時代、ファンが帰った後の球場で、外野のフェンス沿いで、黙々とバットを振るのが習慣でもあった。

「1日何百なんて数は必要ない。30なり50なりをしっかりと。集中してやれば、これだけでも疲れる。今はコロナ禍で遠征中も外出できないんでしょ? 時間はたっぷりあるだろうから、ぜひやってもらいたい」(柏原氏)

もちろん、ベンチ裏などメディアの目が届かない場所で、すでにこっそりとこの鍛錬を開始している可能性もある。一方、グラウンドでの佐藤輝はスタンドティーに置いたボールを打つ、通称「置きティー」が主なルーティンとなっている。

誰もが驚く規格外の飛距離は、一番のストロングポイントで、あとはその確率をどう上げるか。話題のルーキーが〝本物〟になるヒントは、歴代のアーティストたちの「かつての取り組み」の中に隠されている。

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