【社説】参院広島再選挙告示 金権決別へ本気度競え

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 首長や地方議員を大量に巻き込んだ金まみれ選挙で、全国にとどろいた汚名を返上するきっかけにできるか。異例の再選挙を通じて、候補者や政党はもちろん、私たち有権者も金権政治と決別する本気度が問われる。

 一昨年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、広島県議から転身した河井案里氏の有罪が確定して当選が無効となった。それを受けた再選挙が、きのう告示された。議員の死去や辞職に伴う参院長野選挙区と、衆院北海道2区の二つの補選と同様、25日に投開票される。

 ▽具体策聞きたい

 再選挙には1議席を巡って新人6人が立候補した。自民党新人で公明党推薦の元経済産業省官僚と、諸派の政治団体「結集ひろしま」新人で立憲民主、国民民主、社民3党推薦のフリーアナウンサーとの事実上の与野党一騎打ちとなりそうだ。他に、無所属新人の3人と、NHK受信料を支払わない方法を教える党新人が立候補している。

 有権者が聞きたいのは、後を絶たない金権政治とどう決別するか、その具体策だろう。再選挙という不名誉な事態に陥ったのは、案里氏が夫で元衆院議員(広島3区)の克行被告と共謀し、県議4人に計160万円を渡したとして、公選法違反罪での有罪判決が確定したからだ。

 ▽いまだ説明なし

 河井夫妻の所属していた自民党にこそ、買収事件を再び起こさないための対応が求められる。党の新人候補の出陣式で応援弁士たちは、候補の人柄や行政経験をアピールしつつ「今度こそは間違いのない人を選ばないといけない」とも訴えた。買収事件は河井夫妻だけの問題だと言いたいようだ。法相まで務めた克行被告を「他山の石」と人ごと扱いした党幹事長が批判されたのを忘れたのだろうか。

 ただ、金権政治は河井夫妻に限らない。カジノを巡る贈収賄、鶏卵疑惑…。安倍晋三前首相が絡んだ「桜を見る会」の問題や菅義偉首相の長男が関与した総務省の接待疑惑も起きた。党の体質かもしれない。

 大臣と官僚、利害関係者との付き合いや、選挙の在り方などを抜本的に改めない限り、金権政治は根絶できない。

 しかも前回の参院選で、党本部は新人候補だった案里氏陣営に1億5千万円の資金を提供していた。当時の党現職の10倍である。なぜ、そんな大金を渡したのか。買収事件の引き金になったのではないか。どう使われたのか。あまた疑問はあるが、いまだ党本部の説明はない。

 金をもらった党所属の地方議員の問題も未解決だ。党として何ら処分しないのでは、いくら「信頼回復」と叫んでもむなしく響くだけではないか。どうケジメをつけるのか、党県連としても自浄能力が問われている。

 連立を組み、案里氏「当選」に貢献した公明党の対応にも疑問が残る。金権政治と決別するつもりなら、衆院広島3区ではなく、今回の再選挙にこそ党の候補を立てるべきだった。

 ▽ふがいない野党

 「支援者には『自民党の候補者はもうこりごり』との声が強い。次はどの候補者であろうと応援できない」。3区に党の候補を出す際、公明党県本部の幹部はそう説明していた。にもかかわらず今回、自民党候補を応援するのでは矛盾していよう。

 野党もふがいない。早くから案里氏の辞職を求めていたが、再選挙が決まっても候補はなかなか決まらなかった。秋までにある衆院選に向けて選挙準備を整え与党に迫ってこそ、金権政治との決別に本気で取り組ませる力になろう。

 例えば、政治家に関わる金は一円たりとも透明化させ、その流れは全て追跡できるよう情報公開を進めることが必要だ。公選法に抵触するか線引きの難しい「グレーゾーン」を放置していては、当初の克行被告のような政治家にとって都合の良い言い訳を黙認することにもなる。

 今回の再選挙は、菅義偉政権が昨年秋に発足して初めての国政選挙でもある。どうすれば地に落ちた広島の面目を一新し、政治への信頼を取り戻せるか。考え抜いた1票を投じたい。