明暗分かれる2人のルーキー 牧秀悟と佐藤輝明の“差”をデータで検証

DeNA・牧秀悟(左)と阪神・佐藤輝明【写真:荒川祐史】

DeNAの牧はここまでリーグトップの打率.431、13打点

プロ野球は開幕から2週間が経過し、各球団がそれぞれ4カードを消化した。セ・リーグでは阪神が好調で首位に立ち、パ・リーグでは楽天が貯金6となり、スタートダッシュに成功している。

そんなペナントレースにおいて、セ・リーグの期待の新人で明暗が分かれている。開幕してから結果を残し、インパクトを与えているのは、DeNAの牧秀悟内野手だ。ここまでリーグトップの打率.431、13打点をマークし、3本塁打も阪神のサンズ、ヤクルトの村上に次ぐ3位タイとなっている。
その一方で、開幕前の期待とは裏腹に苦戦を強いられているのが、阪神の佐藤輝明内野手だ。オープン戦では12球団最多の6本塁打を放ったものの、ここまで打率.163と低迷。2本塁打を放ち、そのパワーは発揮している一方で、リーグワーストの21三振を喫している。

ボール球に手を出す割合、空振りの割合が高い佐藤輝

ここまで明暗が分かれることになっている牧と佐藤輝のルーキー2人だが、では、2人の打撃内容にはどこに“差”があるのだろうか? セイバーメトリクスの指標を用い分析などを行う株式会社DELTAのデータを用い、2人の打撃の特徴を紐解いてみよう。

ここまで12試合に出場して51打数22安打3本塁打13打点、打率.431の好成績を残している牧。佐藤輝は対照的に、12試合で43打数7安打2本塁打4打点、打率.163となっている。佐藤輝が21三振を喫し、牧は11三振だ。より細かなデータを比較すると、2人の違いが見えてくる。

1つはボールの見極めとコンタクトの精度だ。ボール球に手を出す割合を示す「O-Swing%」の指標を見ると、佐藤輝は両リーグの規定打席到達者でワーストの47.7%となっている。ゾーン外のボールに対し、2球のうちほぼ1球は手を出すということだ。牧はここまで35.2%。これでも、ワースト9位ではあるが、10%超の差がある。

さらに、このボール球をバットに当てる割合を示す「O-Contact%」を見てみると、佐藤輝は51.9%となっている。この指標自体では佐藤輝よりも数値の悪い選手はいるものの、その選手たちは「O-Swing%」は佐藤輝よりも悪くない。佐藤輝はボール球に数多く手を出し、しかも、その2球に1球は空振りしているということを表している。

ストレートにおける得点増減を表す「wFA」も両リーグワーストの佐藤輝

一方の牧の「O-Contact%」は79.1%と高い。これは12球団の規定到達者の中でも8位に位置している。牧の場合はボール球に手を出しても、空振りするのは5球に1球ほど。もちろん凡打になることもあるだろうが、ファウルで逃れ、次のチャンスへと繋げることができていることが見える。

また、ストライク球に対してのコンタクト割合を示す「Z-Contact%」でも佐藤輝は規定到達者でワーストの65.7%。牧も決して高くはないが、83.5%と佐藤輝とは大きな差がある。ボール球に手を出すと、圧倒的に凡打の可能性が高くなる。好打者には、ボール球には手を出さず見極められることも大事な要素となる。まず、佐藤輝はボール球の見極め、そしてコンタクト割合という点で課題を残していると言えそうだ。

球種別の対応についても検証してみよう。2人に大きな差が見られるのは、ストレートだ。球種別の得点増減を表す指標「wFA」で、牧は1.4とプラスになっているのに対し、佐藤輝は両リーグでワーストの-5.3となっている。ブービーのDeNA宮崎敏郎内野手でさえ-3.3で、佐藤輝がストレートに苦戦している様子が窺える。牧はwFAだけでなく、ツーシームでの得点増減を表す「wFT」が2.8、カーブの「wCB」とスプリットの「wSF」がそれぞれ1.7と、幅広く球種に対応している。

ここまでは明暗が分かれる形となっている牧と佐藤輝。ただ、シーズンはまだ始まったばかり。佐藤輝がプロのレベルに適応し、よりハイレベルな新人たちのプレーを期待したい。(Full-Count編集部 データ提供:DELTA)

データ提供:DELTA
2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』も運営する。

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