「コロナ太り」と体重管理(後編)

ストレスとコロナ太り 毎日体重を測る大切さ

Q. ストレスによる飲酒の影響は?

A.

自宅待機中に、アルコール摂取量が増えた人も多いと思います。お酒のカロリーは、缶ビール1本(350㎖)が約140カロリー、ワイン1杯(100㎖)が約75カロリー、ウイスキー一杯(30㎖)が約70カロリー。そうカロリーが高くないですね。問題は、おつまみや、一緒に食べる食事の量と、そのカロリーだと思います。

Q. 太ることとストレスとの関係は?

A.

密接に関係があると考えられています。食欲を抑制する働きを持つセロトニンという脳内神経伝達物質があり、これが不足すると脳の機能低下や、精神面のアンバランスにつながります。逆も然りで、ストレスがたまるとセロトニンが減少します。自宅待機で知らないうちにセロトニン不足になっていたかもしれません。すると食事の量や間食が増え、体重の増加につながります。

セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから作られるので、バランスの取れた食事を、腹八分目程度に定期的に食べることが、コロナ太りを予防することになります 。念のために言うと、セロトニンをサプリメントで摂取しても効果はありません。

Q. 体重管理をするためのアドバイスは?

A.

健康への意識を高める意味で、毎日体重計に乗ることはとても大事です。可能なら食事日記もつけて、カロリーや栄養バランスを意識して生活しましょう。早食いは、満腹感を感じる前に次の物を食べてしまうので、過食につながります。よくかんで、ゆっくり食べましょう。

また、グリセミックインデックスといって、食品の血糖値上昇度合いを示す数値があります。例えば、白米はこの数値が高いのです。こういったものを多く摂取したり、食事の最初に口に入れたりすると、体がまずそれを吸収するので体への負担が増し、太りやすくなると言われます。野菜を先に食べてから、白米を食べるといいと言われるのは、そういう理由です。

規則正しい生活も太らないために重要です。適正な食事回数は1日3回。1日2回にすると、1回の量が増えるので太りやすくなります。消化管は、副交感神経の支配下で体がリラックスしているときに活発になるため、寝る前に食べた物は体に吸収されやすくなり、肥満と密接に関係していると言われます。

また、「時計遺伝子」という言葉があります。1日の時間の経過にはリズムがあり、それに合わせて体のさまざまな遺伝子が働き、体の調子を整えています。これを「概日リズム」と言い、太陽光や食事もこのリズムに大きく関わっています。不規則な生活は体のリズムを崩し、病気や体重増加、肥満になるリスクを高めることになります。

Q. 樋口先生が個人的に実践しているコロナ太り対策は?

A.

運動で痩せることは難しいと前編で説明しましたが、痩せることに直接つながらなくても、楽しく体を動かして爽快感を味わうことはストレス解消につながります。ストレスが体重増加に関係することは先ほど説明した通りです。

そこで、パンデミック中にわが家は一家でフラフープを始めました。これなら、階下の住人から「うるさい」との苦情も来ません。フラフープを回すのは、やってみるとなかなか難しかったですが、楽しいので夢中でやってしまうのと、実際かなりの運動量を要します。ウエスト回りの引き締めにも効果があると思います。

樋口先生一家がパンデミック中にトライしたストレス解消と運動不足解消大作戦は、フラフープ。写真は、楽しくフラフープを回す樋口先生の娘さん

樋口聖先生 (Sei Higuchi, PhD)

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コロンビア大学博士研究員。 脂質代謝と食欲の関係を解明し、新規の肥満・糖尿病治療法の提案を目指している。 薬学博士、薬剤師(日本の免許)。 城西大学大学院で薬学研究科修士課程を修了後、福岡大学大学院で薬学研究科博士課程を修了。 京都大学医学部博士研究員を経て、2015年から現職。 ニューヨーク日本人理系勉強会(JASS)幹事など。

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