広島・鈴木誠は”スーパー誠也人” 常識では測れないファンへの思い

ホームランを放ちダイヤモンドを一周する広島・鈴木誠也

広島・鈴木誠也外野手(26)が9日の巨人戦(マツダ)で2戦連発となる3号ソロを放った。目標としてきた菅野からの初アーチを「なかなか打てる投手ではないのでよかった」と振り返ったが、その後の2打席は見逃し三振に仕留められたとあって「まだまだ本気で勝負されると手も足も出ない。菅野さんがギア入れたときにいい打撃ができればいい」と反省も忘れなかった。

球界を代表する打者となった今でも失敗を糧に成長を遂げている。昨季は史上4人目となる5年連続での「打率3割、25本塁打」を達成。名だたるレジェンドに肩を並べる数字を残したが、本人には後悔しか残っていない。11月10日のヤクルト戦(神宮)で3打数3安打という過酷ノルマを乗り越え3割に到達。そして最終戦となった翌11日のシーズン最終戦となった中日戦(マツダ)は欠場した。

数字がすべてのプロ野球界では記録達成のためシーズン終盤に“休養”するのは当然の措置。しかし、赤ヘルの主砲にとっては苦渋の決断になった。「(個人の)数字が大事なのは分かっている。でも、そこは僕の野球観と違うというか…」。チームのBクラスが確定したとしても、試合を休んでまで達成した記録を喜べないことを昨年の一件で痛感したという。

だからこそ、同じ悔しさを味わうつもりはない。今年も3割&25発を打って6年連続となれば王貞治氏、落合博満氏以来3人目の快挙。しかし「出るんじゃないですかね。チーム状況によりますけど…」と再び昨年と同じ状況となったら打率を落とす危険性を顧みずに、出場を選択するつもり。何より消化試合で個人成績ばかりが注目されるのではなく、最後までチームの勝敗に脚光が浴びるよう貢献するのが務めだと思っている。

そうした独特ともいえる野球観は「どの試合もファンの人が来て『ホームランが見たい』とかいろんな思いで見てくれる。そこで出ていなくて『いないかのかよ』とガッカリさせるのは嫌」とファンへの思いから。侍ジャパンの4番を背負う男は数字や常識では測れない選手になっていく。

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