【俳優・秋元才加さん】出る杭が打たれない社会に。多様な結婚観を提示する演劇「SUPER FLAT LIFE」上演を終えて、思うこと。

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4月3日(土)、4日(日)と2夜連続で上演されたオンライン演劇『SUPER FLAT LIFE -スーパーフラットライフ-』。社会課題とされるテーマを、より柔らかく、そして現実的に見つめなおす視座転換のクリエイティブで自分ごと化する機会を提供して展開されるストーリーは、彼氏に別れを告げられたOL棚橋エリが、少し変わったオンライン結婚相談所・スーパーフラットライフに半ば勢いで登録したことから始まる。従来の結婚観を覆す相手との度重なる出会いを経て、エリの結婚観がだんだんと揺らぎ始め――。

主演のエリを演じたのは俳優・秋元才加さん。幼少期からLGBTQ当事者の親友がそばにいた環境で育ったことから、エリとは価値観のズレがあったそうだが、演じていく中で、そのズレが自身に新たな気づきを与えてくれたと話す。

主人公・エリとは異なる“普通”の価値観を持つ秋元さんが、作品を通して気づかされたこととは?

――世の中が思う“普通”を背負った役とも捉えられる棚橋エリを演じてみての感想を教えてください。

エリは自分のことを普通と信じてやまない人物。作中に出てくる結婚相談所「スーパーフラットライフ」で出会った人たちに対して、セクシュアリティや生き方、考え方が自身の普通の範疇を超えていると知ると、拒絶感を示してしまうんです。無意識に多くのフィルターを通して人を判断してしまっているというか。

そういう点で言えば、“世の中の普通”という固定観念がどのようなものか分かりにくい環境で育ってきた“私の普通”とは違うものを感じましたし、世間の「普通」という感覚に触れることで、まだまだエリのような感覚で物事を判断する人も少なくないのだなと改めて考えさせられました。

――なるほど。秋元さんの“普通”とは、どのような環境の中で育まれていったのでしょうか?

幼少期から親交の深いトランスジェンダーの友人がいたので、ジェンダーやセクシュアリティで人をカテゴライズするエリのような感覚で人と接したことがあまりないんです。人を既存の属性に当てはめるのではなくて、その人自身を軸としてどんなものやこと、人が好きなのかを知っていくことが大切なことではないでしょうか。

そのような過程を経て「友達になれるかも」あるいは「あ、ちょっと気が合わなそうかも」と判断をして人との関係を築いていく、それが私の“普通”ですかね。とはいえ、私自身もまだまだ勉強不足な面も多く「知っているつもり」が一番怖いなと思っていたので、上演を終えた今、固定観念に捉われない結婚観やLGBTQについて学びの機会をいただけて感謝していますし、ご覧になって下さった皆様にとっても、考えるきっかけになったのであればキャスト、スタッフ一同嬉しく思います。

一人ひとりの価値観をリスペクトする気持ちが、多様な生き方を選択できる空気づくりに繋がる社会へ。

――作中では「親友と同性婚ができたら?」というテーマのもと、同性婚やパートナーシップ制度について斬新な切り口で触れるシーンも多く印象的でした。

作中でも焦点が当てられていましたが、結婚、家族、夫婦といった関係性が、今よりもっと自由な形態で国に認められれば良いなという気持ちはずっとあります。先日、「結婚の自由を全ての人に訴訟」において、札幌地裁が“同性婚を認めないことは違憲”という判決を下したことが大きく取り上げられ嬉しい気持ちになった一方、「皆が平等な法・制度のもとで暮らしていける社会を目指すには、これだけの時間や労力をかけて戦わなくてはいけないの?」と疑問に感じたことも確かです。

国へ納めているものは皆同じなのに、ジェンダーやセクシュアリティが壁となって社会的に損を被るなんてことはフェアではないんじゃないか、とも感じてしまいます。私はヘテロセクシュアル(異性愛者)として結婚していますが、改めてヘテロセクシュアルとして当たり前に享受していたものがたくさんあったんだなと気づかされました。

――最後に、日本が「多様性のある社会」への道を歩んでいくためには、どのようなことが必要だと感じていますか?

他者の生き方や選択を認めるか否か以前の話になりますが、まずは一人ひとりが自分自身を認めて愛してあげることが大切ではないでしょうか。その上でも相手を認められなかったり、理解できなかったとしても、「私とは違うけれど、あなたの意思を尊重します」という気持ちを持つ。私が人と接する上で大切にしていることです。私はミックスということもあって、人より背が大きかったり髪が明るかったりで嫌な思いをたくさんしてきました。周囲の人間に危害を加えるわけではないのに、「普通ではないから」と否定され個性を内に押し込めざるを得ないという経験をした、している人は他にもいるはずです。

ただ、相手をリスペクトする気持ちが社会全体で浸透すれば、周りと違うこと、ジェンダーやセクシュアリティもそうですけど、そのままの自分で生きていける素敵な社会に繋がるのかなとは考えたりします。そうすれば既存の制度やカテゴリにおける当たり前というのも、より広く拡充されていくでしょうし、いつかは誰もがその範囲内でサービスや社会保障を選び、受けられる世の中に変わっていくと思うんです。協調性は持つけど、埋没はしない。色々な人たちが埋もれないよう、のびのびと生きていくために、選択肢がたくさんある、そんな社会になれば良いですよね。歩み寄ってお互いを分り合おうする気持ち、それが何より必要だと感じています。

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■ SUPER FLAT LIFE -スーパーフラットライフ–
結婚を目前に彼氏に突然の別れを告げられたOL 棚橋エリ(秋元才加)は、コロナ禍でオンライン結婚相談所「スーパーフラットライフ」に出会う。性別不詳の支配人、アキラ(中山咲月)はエリに次々に理想の結婚相手を紹介してくれるが、その相手というのがちょっと異質だった。同性婚を望む超合理主義者の女、レズビアンに、別居婚や契約結婚などなど、従来の結婚観を根底から覆す人たちばかり。実はゲイだった彼との恋愛生活や、親友との同居生活を経て、悩んだ末にエリが出した結論は――。

■ チケット販売:4月11日(日)21:00まで
■ アーカイブ視聴:4月11日(日)23:59まで
https://harumari.tokyo/feature/super-flat-life/

インタビュー・取材/芳賀たかし
写真/新井雄大
記事制作/newTOKYO