【「珈琲いかがでしょう」インタビュー連載・前編】中村倫也が演じる際に心掛けていることとは? 「現場で怒られないこと(笑)。あとは、みんなが楽しくやれればと思っています」

中村倫也さん演じる移動珈琲店・店主の青山一が、誠実に心を込めて珈琲を淹(い)れながら、人生に疲れた人々を癒やしていく連続ドラマ「珈琲いかがでしょう」(テレビ東京系)。原作ファンも納得のいでたちで丁寧に珈琲を淹れつつ、お客さん一人一人に寄り添いながら生きるヒントをもたらすその姿に、勇気づけられる方も多いのではないでしょうか?

今回は、そんな話題作に出演しているキャスト陣へのインタビューを、前編と後編にわたってお届けします。前編に登場していただくのは、主演の中村倫也さん。撮影現場の様子のほか、役を演じる上で心掛けていること、最近幸せを感じたエピソード、そして中村さんお薦めのものを「○○いかがでしょう?」と明かしてくれました!

――撮影現場の雰囲気はいかがですか?

「1日に撮影する分量が多いので、本当にもうバタバタです。でも、本作は映画監督の方々が撮影されていて、皆さんそれぞれ違うカラーなので、連ドラになったときに面白くなるだろうなという予感はあります。それでも、映画のリズムとテレビドラマ…ましてやテレビ東京のドラマのリズムってやっぱり違うので(笑)。荻上直子監督も、ドラマの撮影が始まってしばらくは『こんなに時間がないんだ』とバタバタされていましたね」

――朝から晩まで撮影されていると聞いています。

「そうです。でも、今ではペースもだんだんできてきて、リズムも良くなってきていますね。ただ、毎回ゲスト出演者の方がいらっしゃるのですが、その方々は撮影現場に『初めまして』と来られて、1~3日で撮影が終わる流れなので、現場全体の慌ただしさみたいなものは常にあります。ここまで毎回目まぐるしく出演者が入れ替わるのも珍しいかな(笑)。他の作品だと、もう少しメインの出演者がいる中で、数人が替わっていくというパターンが多いですけど、このドラマでは、基本的に“僕”対“ゲスト”だったりするので、それぞれの方と短くも濃い時間を過ごさせてもらっていますね」

――中村さんの青山一役は原作ファン待望ということですが、役作りにおいて原作はどれくらい意識されたのでしょうか?

「ビジュアルだったり、そういうものは寄せているつもりですが、実写化に際して特に意識していることは、“なぜか分からないけど、この男に身の上話をしてしまう感”ですかね。各話のゲストの方々のエピソードをホストとして引き出せるような存在を、まずは目指しています」

――ちなみに、中村さんはどんな人に話をしたくなりますか?

「僕はあまり人に自分の話をしないんですけど、距離感が大事なんじゃないんですかね。適度に僕に興味があって、適度に僕に興味がない人が、楽かもしれないですね(笑)」

――そういった感覚は、青山役を演じるにあたり生かされているのでしょうか?

「それこそ毎回相手が違うので、それによって言い方が多少変わったりはあると思うのですが、そういった変化は相手にバレないようにしないといけないかなとは感じますね」

――劇中では青山が珈琲を淹れるシーンが毎回出てきますが、珈琲を淹れる過程と、役作りをされる過程で共通している部分はありますか?

「何事もそうだと思うのですが、一生懸命やっていると、それまで気がつかなかったものが見えてきたり、仕事の上で助けになったりするんですね。一つのものに対してどこまで追求して向き合えるかというのは、どの仕事でも大事な気がします。そういう意味では、珈琲に関しても、丁寧に淹れることでいろんな変化や反応があったりする部分は似ているかもしれません」

――本作の青山をはじめ、これまでいろいろな役を見事に演じられていますが、毎回どんなことを心掛けてお芝居されているのでしょうか?

「セリフを間違えないことがまず第一ですね。次に、現場で怒られないこと(笑)。あとは、みんなが楽しくやれれば、と思っています。でも、基本的に撮影現場でも、この取材と同じテンションですね。このままの感じでお芝居をしたり、共演者の皆さんとお話をしたり、ちょっかいを出したり。『腹減った』とか『疲れた』とかも言いますね(笑)」

――いつも自然体でいらっしゃるんですね。久々にテレビ東京のドラマへの出演となりますが、他局と比べての違いなどあらためて感じる部分があれば教えてください。

「他のテレビ局と違うところは、やっぱり予算の桁じゃないですか?(笑)。真面目な話をすると、今作もそうなんですが、ドラマ化にあたりいろんな描写がどこまでできるのかという振れ幅が作品の魅力の一つになってくると思うんですよ」

――それは、具体的にどういった部分に感じますか?

「荻上さんが連続ドラマの監督をされるというところもそうだと思います。あとは、ドラマが終盤に向かって結構ダークな内容になっていくので、そういう深い穴の底をどれだけちゃんと表現できるかという点であったり。それは、クリエーター陣もある程度の自由度がないとできないと思うので。視聴者の皆さんにも、放送を見てそれを感じていただけたらいいなと思います」

――テレビ東京と言えば、マスコットキャラクターのナナナと中村さんの絡みも気になります。

「僕からは共演NGにしているんですけどね(笑)。僕のところに来るんですよ! 手を変え品を変えいろんな扮装(ふんそう)をして…。僕は迷惑しているんですよ!! 今日も、普通のと牛みたいなものが2体いましたからね」

――ナナナとの絡みを期待してもいいですか?(笑)

「…やんなきゃね。僕は、ナナナを雑に扱うと決めているタイプの俳優なんです。ナナナは、雑にされてもかわいそうに見えない顔をしているからいいんですよ! ぜひ僕とナナナの絡みも楽しみにしていただいて(笑)」

――期待しています!(笑)。ところで、第1話(4月5日放送)で、夏帆さん演じる垣根志麻の「青山さんの珈琲は私のガソリンです」というセリフがありましたが、中村さんにとってのガソリンとは何でしょうか?

「お金以外でですか?(笑)。こういうふうに物作りをしていて、それが世に出るというのは、ちょっとしたいたずらに似ている感覚があるかもしれません。サプライズみたいに、人にバレないように作って、それをいざ放送日に皆さんに見ていただいて反応があって…。そのために、“しめしめニヤニヤ”と撮影している楽しさはありますね」

――いつもさまざまなサプライズをありがとうございます。本作は、“幸せを運ぶ移動珈琲物語”ということで、中村さんが最近、誰かに「幸せをもらったな」と感じたエピソードがあれば教えてください!

「なんでかは分からないんですけど、この間、両親がウインナーを送ってくれたんですよ。昨日の夜にそのウインナーを焼いて食べたんですけど、おいしかったです。幸福のポークウインナーです!」

――ご両親から送っていただくと、さらにおいしさが増しそうですね!

「愛情がこもっているんですかね(笑)」

――すてきなお話を聞かせていただいたところで、最後に、ドラマのタイトルにちなんで中村さんが人にお薦めしたいものを「○○いかがでしょう?」で教えていただけますか?

「動物図鑑ですね。世界の鳥とか、魚が好きで、分厚い図鑑が家にあります。『この鳥はこの国にいるんだ!』とか、見ていて楽しいんですよね。だから、皆さんも暇な時に“動物図鑑いかがでしょう?”(笑)」

ひょうひょうとしながらも、素直な思いを丁寧に語ってくれた中村さん。ご両親から送られたウインナーのエピソードを笑顔でお話しされていた姿が印象的でした! そして、皆さんもぜひこの機会に動物図鑑を開いてみてはいかがでしょうか?(笑)。「珈琲いかがでしょう」インタビュー連載・後編では、作中で謎の男を演じるあの方が登場しますので、お楽しみに!

【プロフィール】

中村倫也(なかむら ともや)
1986年12月24日生まれ。東京都出身。ドラマ「凪のお暇」「この恋あたためますか」(ともにTBS系)、NHK連続小説「半分、青い。」、「新宿セブン」(テレビ東京ほか)、映画「騙し絵の牙」「ファーストラヴ」「水曜日が消えた」など多方面で活躍している。映画「100日間生きたワニ」(声の出演)が5月28日より公開予定。初のエッセイ集「THEやんごとなき雑談」が発売中。

【番組情報】

「珈琲いかがでしょう」
テレビ東京系
月曜 午後11:06~11:55(初回~第3話は午後11:06~深0:00)
【出演】 中村倫也 夏帆 磯村勇斗 光石研ほか
【原作】 コナリミサト「珈琲いかがでしょう」(マッグガーデン刊)

取材・文/鬼木優華(テレビ東京担当) 撮影/蓮尾美智子

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