高齢者ワクチン接種開始 長崎県内 大学病院・森内教授「徐々に元の生活へ」

高齢者へのワクチン接種の意義について語る森内教授=長崎市坂本1丁目、長崎大学病院

 大阪や東京などで感染が再拡大するなど収束の兆しが見えない新型コロナウイルス感染症。12日からは医療従事者以外の人で初めてとなる65歳以上の高齢者へのワクチン接種が、県内では長崎市の特別養護老人ホームで始まる。県内の他市町でも近く始まる見通しだ。接種の意義や副反応への対応、基礎疾患がある場合の注意点を日本ワクチン学会理事を務める長崎大学病院の森内浩幸教授に聞いた。

 -高齢者への接種が始まる意義は。
 重症化のリスクが高い高齢者や基礎疾患がある人への接種が終われば、流行が続いたとしても犠牲者が出る確率は相当減る。医療機関の逼迫(ひっぱく)もなくなる。そうなれば徐々に元の生活に近づけていける。

 -痛みや副反応について。
 副反応と言われるものは三つかなと思う。一つ目は痛みや倦怠(けんたい)感。私も1回打ったが、「あっ、もう終わったの」という感じだった。採血に使う針よりワクチン接種の針は細い。さらに皮下注射は斜めに入れるが、筋肉注射は真っすぐ入れるので痛みは少ない。ただ翌日の痛みはインフルエンザよりあるようだ。自分自身は肩より上に手を上げるときに気付いたくらい。痛みや腫れは数日で消える。
 (重いアレルギー反応の)アナフィラキシーはインフルエンザの予防接種より多く起きているが、痛み止めの薬や抗生剤を飲むときよりも確率はうんと低い。アナフィラキシーが怖いのはすぐに対応できない状態で起きることだ。今回は接種会場に特効薬が用意されている。
 ワクチンそのものではないが、接種に関連して起こるトラブルとしては「血管迷走神経反射」がある。ホラー映画を見たり、お化け屋敷に入ったりして失神する症状。脳貧血状態になって立ちくらみが起きる。採血時に気分が悪くなったことがある人は要注意だ。

 -基礎疾患やアレルギーがある人は。
 基礎疾患があるからこそ接種した方がいいが、体調があと一歩ということもあると思う。「このタイミングで打っていいか」という判断はかかりつけ医に事前に相談してほしい。

 -変異株が県内でも確認された。
 変異株にもいろんな種類がある。いわゆる英国型は感染力が強く、ある程度重症化することが分かってきているが、ワクチンの効果に関してはほとんど差がないことが示されている。

 -県内の各自治体の高齢者への接種計画は施設入所者からだったり、二次離島の住民からだったり、集団接種だったりいろんなパターンがある。
 接種の主体が市町村に移ってきているのは、その地域ごとの実情を考えて対応しなくてはならないからだ。特に今回のようにより多くの人にできるだけ急いで、しかも供給体制が不安定な中でやっていこうとなると、市町の特性、医療体制を考えてやっていくことになると思う。

 


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