コロナ禍になる前から、どんなものでもテイクアウトがかなう台湾。だから、どんなものでもお弁当になってしまいます。お鍋、麺料理だって、テイクアウトすればお弁当になってしまいますよね。
実際、台湾人のお友達に「お弁当」について聞いてみたらみんな確認してくるのが、「日本人の思っているお弁当なのか、台湾人の便當(弁当の中国語)なのか」です。というのも、台湾人にとっては「便當」といえば、テイクアウトしてお店の外で食べるものすべてを含むようなのです。
例に出してくれたのが、映画『先に愛した人』の小籠包。主人公の阿傑が宋志の好きだった小籠包を持って病院に駆け込んだけれど、宋志と同室だった患者さんたちの姿を見かけて、宋志はもうこの世にはいない、と実感してしまうというシーン。「あれに出てくる小籠包だって一応“便當”だよ」と言うのです。「小籠包をテイクアウトして豆漿(豆乳)と一緒に食べれば、れっきとした一食になるしね!」って。台湾の便當文化、おそるべし!
その中でも自助餐(セルフサービスの定食屋さん)や燒味(香港のローストダック)などを売っているお店でテイクアウトするのが、台湾のお弁当のイメージに近いかなと思います。
ご飯にメインのおかずと副菜が、使い捨ての紙製の箱に入っていて、おかずは選べたり選べなかったりしますが、ご飯に乗せるメインディッシュによって値段が変わるシステムです。
お店によって値段設定はさまざまですが、一般的なお店で100元を超えることはあまりありません。安いのを売りにしているお店では50~60元で食べられる店もあって、給料日前になると行列をなします。スープは無料でお替わりし放題というところも多く、空腹を満たしたい若者に大人気です。
こういったお店は油を多く使っている印象があるのですが、最近では健康を売りにしているお店もどんどん増えてきています。というのも「値段は張っても体にいいものを食べたい」と考える人が多くなってきたからです。
そして環境にいいことをしたいと考える人も多く、洗って繰り返し使える容器を持参して、料理を詰めてもらうこともできます。同僚はガラス製のお弁当箱を店員さんに渡して詰めてもらっていますよ! そこは重たいと思うんだけど……もちろんそんな不満は聞いたことがありません。
台湾のお弁当、おいしいのは当たり前。そして個々のニーズや気分に合わせてお店をいろいろチョイスできるし、買う人の要望をできるだけかなえてくれるお店も多いです。テイクアウトがこんなに便利で手軽で自分好みにカスタマイズもしてくれるから、わざわざ朝早く起きてお弁当を作ろうと思う人が少ないのは当然かもしれません。
Text・写真提供:森下実希(台湾観光情報発信サイト「TaipeiNavi」編集部編集長)
Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)