子どもの失敗は成長の証! 親の声かけで未来は変わる

子どもが何か失敗してしまったときに「ほら、言ったとおりでしょ!」「勝手にしなさい!お母さん知らないからね」なんて言ってしまうことはありませんか? 子どもの失敗は、子ども自身がすべて責任を取るべきなのでしょうか。子どもの立場になって考えてみましょう。

子どもを追いつめていませんか?

ある日の出来事です。少し離れたところをお父さんと子どもが歩いていました。子どもはたぶん3~4歳くらい。すると風が吹いて、子どもの帽子がふわっと飛びました。目の前に落ちた帽子を拾ってかぶる姿を、私は微笑ましく見ていました。

すると、お父さんが「ちゃんとかぶっていないからだろ!」と怒って、頭をパンと叩きました。にこやかな子どもの顔は、一瞬にして泣き顔に。それほど強い叩き方ではなかったようですが、子どもは叱られたことに驚いて大声で泣き出しました。

通りがかりなので、もちろんその瞬間しか見ていませんし、親子の関係やその前にも何かあったのかなどはわかりません。でも少なくとも、お父さんが怒ったり叩いたりしていなかったら、子どもは泣くことはなかったと思います。

子どもは、この場面でどんな気持ちになったでしょうか。その後は、また怒られないようにと帽子をしっかりかぶったり、飛ばないようにさらに抑えてみたりするかもしれません。楽しいお散歩は一変し、帽子を飛ばさないミッションに変わってしまうでしょう。こういった出来事が繰り返されると、何をするにも親の顔色をうかがい、失敗を恐れる子どもに育ってしまう原因となります。

怒るべきことなのか?を考える

この場面で帽子が飛んでしまったのは、風が吹いてきたからです。子どもがふざけて飛ばしてしまったのではありません。ご紹介した例に限らず、不可抗力ということは往々にしてあるもの。また不可抗力に限らず、子どもでも大人でも、誰にでも失敗はつきものです。

たとえば、コップに入れた水を運んでいてこぼしてしまったとき。「ちゃんと持たないから、こぼすんでしょ!」と叱られても、どうするのが「ちゃんと持つ」ことなのかわかりません。ただ叱られたことだけが心に残るでしょう。そして、「あ、こぼしちゃった」と、子ども自身がとても残念な気持ちになっているはずです。その上に親から追い打ちをかけるように叱られたら、さらに悲しくなってしまいますよね。

このような場合は「こぼれちゃったね」と事実を確認し、親も手伝えるなら「じゃあ、一緒に拭こう」と、失敗に対しての対処をすればいいですね。親がすぐ手伝えず、子どもが自分で動ける年齢なら「雑巾持ってきて、こぼれた水を拭いてくれる?」とアドバイスするのもいいでしょう。

罰を与えるよりもアドバイスを

このときに気をつけたいのが、失敗に対して罰を与えるという意識を持たないことです。もちろん、自分の失敗は自分が責任を取るという考え方はあります。しかし、誰かが一緒に後片付けを手伝ってくれるのはうれしいものですし、失敗によって折れた心が元気になります。

そして、ここからが大事です。失敗したことについて、どこが悪かったのか、どうすれば良くなるのかをアドバイスしましょう。「お水の量が多すぎたね」「両手でこうやって持つとこぼれにくくなるよ」など。

「コップを持ってみてごらん」と実際にやってみるのもオススメです。具体的に短い言葉で伝えることがポイントです。もちろんそれで絶対にこぼさず運べるようになるわけではありませんが、こぼす回数は減るでしょう。こぼさず運べたら、「上手に持って運んだから、こぼれなくてよかったね」と認めるとよいですね。

失敗をしたとき、誰かが手を貸してくれて一緒に後片付けをする。次にするときはミスを起こしにくい方法を学び生かしていく。また、誰かがミスしたときは責め立てるのではなく、ミスはカバーしつつ、一緒に解決していく方法はないかと考える。そんな経験を積み重ねていくことで、家族や友だちにも寄り添えるようになっていくのではないでしょうか。

前向きな声かけを心がけよう

赤ちゃんは、何もわからない、何も知らない状態で生まれてきます。そして、大人でも初めてのことは失敗することもありますよね。子どもが失敗をするのは当然と心得ておきましょう。失敗を重ねながら、次第に上手にできるようになっていくでしょう。

水を入れたコップを運ぶ例を出しましたが、「絶対こぼさないで!」「こぼしたら後始末もしてね!」なんて言われると、緊張して、余計に手が震えてしまいそうです。「こうやって持っていってね」と言われたら、安心してしっかり運ぶことができそうですよね。日々の子どもへの声がけの仕方、関わり方が積み重なって、それが子どもの成長につながっていくもの。もちろん、叱ることが必要な場合もありますが、前向きな声かけを心がけていきましょう。

著者紹介
高祖常子(こうそ・ときこ)

資格は保育士、幼稚園教諭2種、心理学検定1級ほか。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事ほか各NPOの理事や行政の委員も務める。子育て支援を中心とした編集・執筆ほか、全国で講演を行っている。著書は『男の子に厳しいしつけは必要ありません』(KADOKAWA)、『感情的にならない子育て』(かんき出版)ほか。3児の母。

これまでの【子育てアドバイザー高祖常子さんに聞く「イライラしない子育て」】は

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