2年続けて

 昨年の10月7日はカラリとよく晴れた。翌日の紙面、諏訪神社の階段を上って拝殿に向かう人々の影が濃い。来年はきっと…と関係者の誰もが唇をかんだ静かな10月だった▲まだ半年も先の話なのに-と、つい考えてしまうのは、私たち新聞社の仕事ぶりに日々“行き当たりばったり”の部分があることときっと無関係ではないのだろう。世の中はもっと、周到な準備の丁寧な積み重ねでできている。長崎くんちの「奉納踊り」が昨年に続いて中止されることになった▲ウイルス感染の先行きはまだ見えない。祭りの熱気や活気もそのための準備や稽古も「混雑」や「密集」と不可分だ。踊町の準備は6月の「小屋入り」前から始まるという▲くんちに詳しい同僚によると、決して早過ぎる結論ではないらしい。来年の秋は、3年分のエネルギーをぶつけて…と書くことは何の足しにもなるまい。関係者の無念はいかばかりか▲日本の大半は地方でできている。その地方の多くは今、大都市圏に比べればずっと小さな感染者数の動きに神経をとがらせ、伝統行事の中止に直面している。おそらく長崎と同様に▲無論、コロナの流行は誰の責任でもない。それでも地方は政府や大都市の無策や緩みにもう少し怒っていいような気がする。状況を動かす気はあるのか、と。(智)

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