鹿児島の住宅耐震化、地方ほど遅れる傾向に 高い費用、家主は高齢[熊本地震5年]

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柱が動かないように壁に木製の合板を入れ、耐震性を高めた玉利勇さんの自宅=5日、鹿児島市下田町

 熊本県益城町で震度7を2度観測した熊本地震から14日で5年。同町では、倒壊した木造住宅297棟のうち、1981年5月以前に建てられた「旧耐震基準」の家が214棟と72%を占めた。鹿児島県は国の施策に準じ、2025年までに耐震化していない住宅をほぼなくす計画だが、高額な費用や高齢化がネックとなり、足踏みしている。専門家は「補助制度の活用など自治体の啓発が不十分」と指摘する。

 旧耐震基準の木造住宅は震度6弱以上で倒壊する恐れがある。鹿児島市下田町の玉利勇さん(73)は3年前、築42年の木造平屋住宅を耐震化した。熊本を訪れ、ブルーシートに覆われた住宅の屋根や、石垣が崩れた熊本城を目の当たりにしたのがきっかけになった。

 耐震診断を受けると、東西方向の揺れに弱いことが分かった。高齢者世帯を対象にしたリフォーム補助も活用。診断費を含む約195万円のうち約60万円を補助で賄った。

 玉利さんは「家は生活の基盤。耐震化と同時にリフォームできたのはありがたかった」と満足している。

 ■地方で足踏み

 住宅の耐震化は都市部で進み、地方ほど遅れる傾向にある。南日本新聞が43市町村に実施したアンケートによると、耐震化率(推定値)が最も高いのは奄美市の93.6%。鹿児島市92.3%、出水市82%、薩摩川内市77.3%、霧島市77.1%と続く。一方、9市町村は50%に満たず、徳之島町41.3%、宇検村44.6%、龍郷町44.8%、大和村47.1%、知名町47.5%など。

 大半の市町村が補助制度を設けているが、耐震化率の低い自治体は補助がないケースが目立つ。

 自治体からは「耐震化には数百万円を要し、高齢者が多いためなかなか進まない」(鹿屋市)「地震の発生が少なく、耐震化への意識が低い」(和泊町)といった声が上がる。

 耐震化率59%の肝付町の担当者は「補助率アップやリフォームへの補助など制度の見直しが必要だが、財政が厳しい」と苦しい懐事情を明かす。

 ■まずは診断を

 耐震化率77.3%の薩摩川内市は市街地を離れると耐震化が済んでいないとみられる古い木造住宅が目立つ。

 建築住宅課の大園厚彦・建築指導グループ長は、震度6弱の地震が起きた1997年の県北西部地震で大きな被害を免れたことが、耐震化が進まない一因とみる。「また起きても大丈夫と思っている人は多い」

 市は2018年から職員が戸別訪問して耐震化の大切さを伝える。旧川内市域と旧樋脇町の一部を回ったものの、耐震化に至った住宅はゼロ。大園さんは「まずは耐震診断を受けて自宅のどの部分に問題があるか知り、家具の置き方などを工夫してほしい」と話す。

 鹿児島大学共通教育センターの井村隆介准教授(地球科学)は「自治体は補助制度があることを周知し、命を守るためには高くない費用だと啓発する必要がある」と訴える。