公文書作成の義務化進まず 沖縄県文化振興会が調査 36市町村で「規定なし」

 行政の意思決定など歴史的な事実の記録となる「公文書」を巡り、沖縄県内全41市町村のうち36自治体で文書の作成を義務付ける規定がないことが13日、県文化振興会による実態調査で分かった。規定がなければ、情報公開請求で文書の「不存在」などが引き起こされる可能性が出てくるため「現在と将来の住民に対する説明責任という観点から大きな障害となる可能性が生ずる」と指摘している。

 公文書管理を明文化した「公文書管理法」は2011年4月に施行された。同法は省庁などの文書作成や管理、移管の方法について定めており、地方公共団体にも必要な施策を「実施するよう努めなければならない」と明記している。

 同会によると、県内では公文書管理に関する条例がある自治体は県を含めてゼロ。全国的にも1%程度という。調査によると、県内市町村の公文書管理のルールは「文書管理規則」で定めているのが2自治体、「文書取扱規程等」が39自治体となっている。

 文書の作成義務についての規定は、同法にある「意思決定及び事務事業の実績」などで具体的に作成を義務付けている自治体はゼロ。事務処理の原則として文書主義を掲げているのが糸満市、豊見城市、南城市、読谷村、伊是名村の5自治体、文書作成に関する規定がないのは36自治体だった。

 一方で、条例などで明文化されていなくても、実務上は文書が作成され、保存されている。県文化振興会公文書管理課資料公開班の仲本和彦班長は「公文書は地域の歩みや自治体を継続するためにも大切なものだ。市町村の公文書を残す取り組みも支援しているので、相談してほしい」と呼び掛けた。

 実態調査は19年に実施。各自治体の規定の確認、アンケート調査などをし、ことし3月に報告書にまとめた。

 国内では1999年に情報公開法が制定されたものの、公文書管理法が制定されていなかったため、情報公開請求で文書の「不存在」が多発した。公文書管理法が施行された近年も自衛隊日報問題や桜を見る会の問題のほか、県の新型コロナウイルス感染症対策本部会議の議事録が作成されていないなど、管理の在り方が改めて問われている。

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