ワクチン供給 時期、量「示して」 大規模接種 市町手探り 長崎県内アンケート

ワクチン接種を受ける入所者=12日、長崎市三ツ山町、恵の丘長崎原爆ホーム

 高齢者の新型コロナワクチン接種について長崎新聞社が実施した県内21市町アンケートによると、5月9日までには全市町で始まる見込みとなった。ただ終了時期を「見通せない」としたのは11市町に上る。前例のない大規模接種事業を成し遂げるため手探りを続ける姿が浮かび上がる。
 県によると、4月中に長崎市に1462人分、残る20市町にはそれぞれ975人分が提供される。
 「供給に関する正しい情報を整理して伝えてもらいたい。『6月末までに』と言われても5月にどれだけ届くのか分からなければ計画は立てられない」(長崎市)、「(供給の)時期と量が分からないと、個別接種は医療機関への予約が取れない。集団接種も医師の確保ができない」(諫早市)。国への要望や課題を聞くと、ほぼ全ての市町から不満が相次いだ。
 終了時期を「7月」と答えた佐世保市は「潤沢にワクチンが届き、医療従事者の確保ができたと仮定して8、9週間でできれば」との条件付きだった。
 重いアレルギーのアナフィラキシーなどの副反応にも神経をとがらせる。西海市は模擬訓練に医師や消防関係者が参加。搬送などの手順を確認したが、「コロナワクチン接種自体が初めて。懸念はある」。五島市は二次離島での接種の際、救急に精通した医療従事者を配置。福江島に迅速に搬送できるよう海上タクシーも確保しておく。
 集団接種の会場が大雨や台風時の避難場所になっているケースもある。佐世保市は「災害で避難所を開設すれば、その間接種ができなくなる」。西彼時津町も「会場と日程が変更になると、設営のための業者、廃棄物処理委託業者、事務スタッフなどの契約見直しも必要」としている。
 高齢者に使われる米ファイザー製のワクチンは解凍後、一定時間内に使い切らなければならない。1瓶当たり打てるのは5回。予約がキャンセルになると無駄になる恐れもあり、東彼東彼杵町は「始めは会場のスタッフで調整ができると思う」と知恵を絞る。
 「住民へのお願い」を聞くと、大村市は集団接種の際に「密を避けるためにも予約時間通りの来場を」と呼び掛ける。効率的な接種のため「肩を出しやすい服装で」と要望する自治体が複数あった。
 地域によっては交通機関の脆弱(ぜいじゃく)さも課題に。対馬市は「島は広くて山がちで集落が点在している。交通手段を持たない人にどうワクチンを行き渡らせるか」と頭を悩ませる。
 一方、65歳未満については、半数以上の市町が予約券の発行、接種ともに「時期が見通せない」と回答。計画の具体化は高齢者接種の進捗(しんちょく)次第となりそうだ。

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